第2話
人を脅すに足る道具を用意していた、それは間違いない。火薬が金属の蓋を弾く音に耳慣れないここいらの連中は、飛んで驚くに違いないのだ。幸運もあった。人気のなさと交通量、パトロール管区、隣人が留守にしていた等々。それに仲間もいた。素性のしれない男が一人、だが文句は付けられまい。自分の素性も言えたものでは無い…。
まあともかく、女に銃を向けた所までは良かった。ソイツは強盗という状況にあんまり真実味が湧かないもんだから、おっとりした動作で鞄を手渡してきた。鞄の中身はその重さだけで分かったので、もう一人に手渡し、両手でしっかりグリップを握り続けた。そうでなければ、手元が狂って自分を撃ってでもしまいそうな感覚に襲われたからだ。クソ。
だから女が急に倒れた時は、陽の落ち際にしぶとく残るこの熱に、地元に住む人間たちさえ耐えられないのだと
すぐに振り返り、この悲劇の発端を探した。確かもう一人の仲間は銃を持っていなかったが、きちんと確認した訳ではない。だが大の大人に、「今から服を脱げ」とか言って全身確かめる訳にもいかない。もとより、二人とも互いに信用ならない。その点において信用している。こっちはクソ野郎、あっちもクソ野郎、それでいい。だが女を撃つなんて…。
鞄を持ったもう一人も、驚いたようにこちらを見つめていた。「何見てんだ?」と言っても、開いた瞳孔はそのまま。——リフレイン、リフレイン。暫らくもせずソイツの虚ろな視線が突き刺さったのはまたもや道路脇のコンクリートタイルであり、気が付くと鞄を下にして仰向けに倒れ込んでいた。
こうして、無電柱化のお陰か外観だけは良い団地の道端に斃れたままの二人を残して、文字通り
鞄を置き忘れる代わりに、命を拾ったのである。
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