第2話

 歩きながら"属性魔法"について調べていた。

 LV・1なので、対してMPを消費する事はなさそうだが、威力も大事だ。


「"風刃"」


 右手を前に向けて翳すと、風の刃が飛んで行った。


「ふむ。今一分からないな。なら」


 今度は壁に向かって"風刃"を放った。


 ガジャッ!


 物凄い音と共にダンジョンの壁がかなり削れた。


「お、おおう! 意外と高威力だな。確かダンジョンの壁は削れないってのが"常識"だったんだけどな。まあ、いっか! それより、消費したMPは…へ!? たったの5MP!?」


 思った以上の高威力低消費だな。

 コレなら、なんとかダンジョンから生きて出られるかも? 何しろ、僕のMPは2500もある。つまりは、連戦でも500回は使える事になるからだ。

 当面の心配が無くなったので安心して鼻歌混じりに歩いていたら、何かがやって来た。


「アレは…人影? 救助隊か!?」


 警察か自衛隊が救助に来てくれたのかと、僕は声の限りに叫んだ。


「おお−い! ココです、ココ!!」


 救助隊に向かって走り出そうとしたが、そう言えば、ココはダンジョンの中だったなと足を止めた。それに、その人影も少し変だった。


「小さいな。子供? ってか、小鬼?」


 その人影の身長は130cmくらいで、頭に小さな角があり、それぞれが短剣や棍棒を持っていた。オマケに体の色が緑色だった。

 コレは人じゃなくて、敵。それも多分"ゴブリン"って奴だろう。

 僕に戦えるだろうか?

 いや、戦って生きるしかない。

 戦わないとしんでしまうんだから。

 自分で自分を叱咤して、耳障りな声で襲って来るゴブリン達に、"風刃"を放つと、10匹いたゴブリン達の首が一斉ににスパッと斬れて地面に落ちた。正に瞬殺だ。

 "風刃"の威力に感心していたら、死んだゴブリン達の死体が光りの粒子となって消えていった。残ったのは錆びた短剣と細身の棍棒と赤い石だけだった。


「この赤い石はなんだろ? "鑑定"」


 "鑑定"してみたら、


『魔法石・ルビー』


 と分かった。

 拾ってみると、確かにルビーっぽかった。 但し、魔法石と表示してあったので、価値は未知数だ。

 しかし、価値が未知数でもルビーはルビーなので、しっかりと回収して"収納"しておく。

 そして、残っている短剣と棍棒を見る。


「短剣は錆びてはいるけど、一応、持っていくかな。投げナイフの代わりには使えるかも。でも、棍棒はなぁ…いらないや」


 7本の短剣を"収納"して、先へと進む。

 進んでいくと、短剣じゃない、少し長めの剣…ショートソード? を持ったゴブリンナイトや弓を持ったゴブリンアーチャー、短い杖を持って魔法を放つゴブリンメイジなど、段々と強いゴブリンが出て来た。それらと斬り結び、"風刃"や"石弾"などで応戦し、見事に返り討ちにした。残った物…ショートソード、弓矢、杖、魔法石という名のルビーといったドロップ品をせっせと回収して"収納"する。

 杖は僕には使い道がないけど、何かの場合に使う事があるかもしれないので、念の為だ。また、ショートソードも太刀が刃毀れしたり折れてしまった時には必要になるので、しっかり回収しておく。弓矢は…使った事がないのでなんとも言えないけど、MPが無くなって魔法が使えなくなった時の遠距離攻撃手段になるので絶対に必要だ。でも、マトモに使った事がないので、万が一の時に使えませんでは話しにならないので、練習をしておかないといけない。


「的は…あの壁のでっぱりでいいかな」


 取り敢えず、矢は20本。予備の弓は5張。

 矢を番えて、ゆっくり慎重に弓弦を絞る。

 狙いを定めて…射つ!


 ひゅるるっ〜…ポテッ…。


 的に当たるどころか、途中で落ちた。


「…もう少し力を込めるかな」


 もう一度、射つ。


 ヒュッ、カッ!


 「おお! ちゃんと当たった! 次!」


 2本、3本と続けて射つと、全ての矢がちゃんと命中した。

 射続ける事、14本。

 残らず命中した。


「俺って弓の才能があったんだ!」


 更に20本を射つが、全部命中した。

 今度は動きながら射つ。

 コレも全部、命中。

 自分の才能に酔いしれるところだったが、ある事に気付いた。


「残りが13本しか残ってない…!?」


 完全に調子に乗り過ぎた。

 射った矢を見てみると、鏃が潰れていた。

 コレでは使い物にならない。


「ゴブリンアーチャーが出て来るのを期待するしかないな…はぁ…やり過ぎた」


 後悔先に立たず。

 気落ちして、トボトボとあるいていたら、


「神様は俺を見捨ててはいなかった!!」


 ゴブリンアーチャー7匹、ゴブリンナイト5匹、ゴブリンメイジ5匹、それと斧を持った、少し大きいゴブリンが2匹現れた。


「"鑑定"…ホブゴブリン? ゴブリンの上位種か。厄介だな。まあ良いけど」


 俺はホブゴブリンの右眼を狙って矢を射った。射った矢は狙い違わずホブゴブリンの右眼を射抜き、脳にまで刺さったみたいだ。

 後ろ向きに音を立てて倒れた。

 他のゴブリン達は、ホブゴブリンが何も出来ずに殺された事で動揺している。

 それを見逃すような俺じゃない。

 ゴブリンアーチャー7匹を先に射殺し、残った5本をゴブリンメイジに射った。射った矢は吸い込まれるようにゴブリンメイジの右眼を射抜いた。矢が尽きたので、弓を捨てて、腰の太刀と脇差を抜いて、ゴブリンナイト5匹に斬り込んだ。一刀対二刀の違いは明らかで、斬り倒すのに1分もかからなかった。

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ボッチな高校生がダンジョンに落ちちゃった!? 井原そうすけ @inoue1145

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