4:触れちゃいけない領域らしい
「助かったよ。ありがとう」
礼を言いながら立ち上がる。少し左肩が痛い。一番無理して動かしてた箇所だからか。
振り返って少女の姿を確認する。淡いブラウンのミディアムショートヘア。キレイな二重瞼に、高い鼻梁。少しあどけなさが残るけど、かなりの美少女だった。服装はと言えば……ヘソ付近までの短いTシャツにショートパンツ。シャツの胸部をグンと押し上げている爆乳に思わず目が行きかけて、慌てて視線を下げても健康的な太ももが出迎えるという二段構え。
『エッチな島だよね』
まあエロゲとしては実に正しい姿だと思うわ。
「ボクはポーラ。この島に住んでる学生なんだよ!」
「学生さんか……ここは孤島って聞いてたけど」
学校施設もあるなら、意外と文明的なのか。
「うん。周りは全部海! 絶海の孤島、セフレ
探せば、東シナ海とかにギリギリありそうなネーミングやめろ。
「それで……この洞窟は牢屋って聞いたけど」
「うん。でもボク、犯罪を犯したワケじゃないんだ」
ホッとする。純朴で素直な少女は、やはり凶悪犯罪者などではなかった。
「未知の皮膚病になっちゃって……感染するとマズイから、ここに隔離されてるんだよ……」
ん!?
今度は全く別のヤベェ情報が。再び緊張が走る。一瞬、後ろに下がりかけたが、
『大丈夫だよ。ヤバい病気の気配とかはしないから』
(…………)
『神だから(笑)。分かるから(笑)』
イマイチ信用ならないけど、まあ実際この女神、分かんないことは分かんないって言うしな。その彼女がここまで自信満々に言うからには、きっと大丈夫なんだろう。
「くる……くるあき? さんは……」
「アキラで良いよ」
ポーラも下の名前っぽいし。ここはお互いに。
「分かったんだよ。それでアキラはなんで牢屋に入れられたんだよ?」
「いや。島への侵入者だと思われちゃってさ。まあ急に現れたから、警戒されるのは当然なんだろうけど」
世界を渡り、突如ここへ出現したことを話すと、
「流石は異世界なんだよ! 不思議すぎるんだよ!」
と、大喜びされる。俺からすると、ゲームの世界に入れてしまってることの方が不思議すぎるけど。まあ向こうからしたら日本こそが異世界だもんな。
「とにかく。俺も悪い事をして捕まったワケじゃないんだ。信じて欲しい」
「そっか。信じるんだよ」
やっぱり心配になるほど素直だな、この子。
「後から事情を聞きに来るとも言ってたよ。ですわ口調の人が」
「それは多分……ロスマリー。島の長をやってる人なんだよ」
言われてみれば、リーダーシップというか、他の3人に牢屋へ運ぶように指示してたのは彼女だったか。まあ顔とかは確認できなかったんだけどね。おっぱいに視界塞がれてたから。
……死ぬほど柔らかかったなあ。
「しかし俺は、それまでここに缶詰なんだよな……」
「カンヅメ?」
ああ、この島には缶詰はないのか。
「閉じ込められたまま、動けないって意味」
「なるほどなんだよ! カンヅメ! カンヅメ〜!」
子供みたいに繰り返している。ていうか、この子……思ってたより幼いのか?
「ポーラはいくつなの?」
「ボク? (ピー)歳だよ」
え? なんか、今どっかから修正音みたいなのが。
『なるほど。規制だ』
静観していた女神がそんなことを言い出す。
(規制?)
『良いかい? どんなに幼く見えても、体が小さくても……エロゲのヒロインは18歳以上なんだよ』
……えっと。
裏を返せばそれって、ポーラは18未満の年齢を告げようとしたっていうことじゃ……
『いけない! それ以上は考えてはいけない!』
(お、おう。すげえ圧だな)
『最悪は世界が崩壊してしまうからね』
(そこまで!?)
『当然だよ。ゲーム自体が成り立たなくなってしまうんだから。だから、良いね? みんな、絶対に18歳以上なんだ。疑問を持ってはいけないよ』
ええ? なんか怖い。触らぬ神に祟りなしだな。タブーの1つや2つは受け入れよう。世界、壊れても困るし。
「アキラは何歳なの?」
「25歳だよ」
こっちの年齢は問題なく発声できる模様。
「おお、お姉ちゃんなんだよ!」
「いや、俺は女じゃないから……」
ていうか、この島もしかして。
『言っただろう。女だけだって』
(いや、それは聞いてたけどさ。まさか男の存在すら知らない感じなのか。島の外には居るとか、そういう設定じゃないのか)
『島の外に関しては記述がないね』
ゲームだし、島外のことまでは設定してない可能性まであるな。
と、そこで。ポーラの様子が少し変化しているのに気付いた。どうも背中を掻こうと、手を後ろに伸ばしているみたいだが。
「う~~! 痒いんだよー!」
彼女がモゾモゾする度、豊かな胸がバインバイン揺れている。しかも胸元付近までしかない丈の短いシャツだから、南半球が見えそうに。
「ちょ、ちょっと。ポーラ」
「アキラ! 掻いて欲しいんだよ!」
お、俺!?
いやでも。ここには俺しか居ないしな。女神さんは多分、実体とか無いんだろうし。
『出ようと思えば出れるけど、降臨となると世界が色々大変になるよ』
うわ……腐っても神か。
じゃ、じゃあ仕方ない。これは医療行為だ。医療行為。
言い聞かせながら、彼女の背中側に回って……ピンク思考が一瞬で霧散する。
「これ……」
皮膚が
「く、薬とかはないの?」
「あるけど効かないんだよ」
ポーラは洞窟の奥を指さす。どうやらそっちに薬があるようだが。
「……量や回数が足りないせいかも知れない。もう1回塗ってみよう。俺がやるから」
皮膚のトラブルは大抵、掻いても良いことがない。その場凌ぎのツケは、炎症の悪化や皮膚のダメージとして帰ってくる。根本から治療しないと。そのためには当然、薬が不可欠だ。
「うう~。分かったんだよ……」
痒いのを我慢して、ポーラは手を下ろす。そして、松明を掲げて洞窟の奥へと歩き始めた。
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