古竜の巣窟①

「ったく歯ごたえがねぇな」

「そうだね。雑魚すぎる」

「所詮ワイバーンなんてこんなもんか」


俺たちは古竜の巣窟の第一層に潜り、ワイバーンを倒したクラスメイトがそう言う。あいつらは自分の力を過信しすぎている。自分は勇者だ救世主だの豪語し、日に日に肥大化していく自尊心に悪態をつく。そんな崇高なる理念を掲げ、戦う彼らは本当に勇者なのか?人に悪口、陰口を行うような人が本当に勇者や聖女になれるのだろうか?そんな思いを胸に俺はその背中についていった。


「こんなクソ簡単なダンジョンに苦戦する意味がわからねぇ」

「まじそれな」

「ここのなにが難しいの?」

「俺たちは世界を救う勇者だ、こんなところで躓いては勇者の名が廃る。その名に恥じぬ行動をしよう」

「「「「「おー!」」」」」


くだらないこと喋りながら攻略は続いた。道中出てくる魔物はほぼ全て返り討ちにしたので、レベルも上がっていった。ダンジョンの魔物も特に苦戦することもなく、気づけば十階層の階層ボス前まで来ていた。持ってきていた懐中時計を見る。攻略開始から2時間そこら…かなりハイペースで攻略していたようだ。視界の端みんながボス部屋に入っていくのが見え、俺もそれに続く、ここの階層ボスはレッドドラゴン。炎のブレスを吐くドラゴンだ。


「ようやく手応えのありそうな奴が来た」

「ま、瞬殺だろうけど」

「うっしゃ野郎ども!気合い入れろ!」


レッドドラゴンに近接職のクラスメイトが突っ込む。それに続き俺も突撃した。突撃してくる俺たちにレッドドラゴンはブレスを吐いてくる。攻撃を交わしつつ、攻撃をする。硬い鱗の隙間を剣で刺したり、魔法で攻撃をした。

圧倒的な数の暴力でレッドドラゴンはすぐに倒れた。


「はっこんなもんかよ」

「あんま強くなかったな…つまんねぇな」

「ここにいてもレベルは上がらないし、どんどん下へいこう」


ドラゴンのドロップアイテムを拾い先に進んでいく…11層、12層、13層…俺たちの快進撃は止まらなかった。


「な、なあ少し休憩しないか?」

「は?なんでだ?」

「魔法職の魔力が尽きかけてる。この先の戦いに支障をきたすぞ」

「そんなもん戦闘中に魔力ポーションでも飲んでりゃいいだろ」

「後衛職はそれでいいが、俺たち戦闘職はそうもいかない」

「もしかして体力ないのか?」

「ち、違う!」

「まあいい。とりあえずそういうことにしておこう。十五層になったら休憩しよう」


尽きかけた魔力消費を抑えながら戦い、どうにか第十五層に辿り着いた。


「はぁ……はぁ……やっと休憩ができる」

「なんだよ…探索ができねぇじゃねえか」


魔力が尽きかけていたいた俺や後衛職は体力や魔力の回復をした。

俺はそんな後衛職の愛莉に話しかけた。


「大丈夫か?」

「え、ええなんとか…」

「魔力と体力は持つか?」

「なんとかギリギリ大丈夫よ」

「…なぁ、攻略を数日に分けたほうがいいんじゃないか?」

「えっ?なんでよ」

「後衛職もキャパオーバーなほどの要求が飛んできて、魔力も気力も厳しいだろ。だから数日に分けて攻略していった方が後衛職のためになるかな〜って」

「大丈夫よ。後衛職はまだまだやっていける。戦える!」


かなり魔力も体力もカツカツだが、攻略を中止する意思はないらしい。


「…そうか。わかった」

「あなた達戦闘職も頑張れ」

「フフッ…ありがとな」


そう言い残して俺は後衛職のいるとこから離れた。

その後、戦闘で傷ついた体をポーションで直したりした。

30分ほど経って魔力も体力も6、7割ほど回復したので、再度攻略を始めた。


「おら、もう魔力も戻っただろ。さっさと行くぞ」

「「「「は〜い…」」」」


全員が立ち上がり、次の階層に続く階段に向かっていった。

襲ってくる魔物を一蹴し、攻略を続ける。

止まらない快進撃、上がり続けるレベル…何もかもがうまくいきすぎている。


「このダンジョン、まだ未攻略なんだろ?」

「そうだな。最高到達階層が30層だっけ?」

「30層程度なら今の俺たちなら余裕だな!ギャハハハハ!」

「な、なあ?流石に危険じゃないか?」

「なに言ってるんだ?こんな簡単すぎるダンジョンになにをおまさら手こずるんだよ」

「その記録を出したのって、歴代最強のSランク冒険者10人チームだろ?そんな強い奴らが完全攻略できなかったのに俺たちでできるのか?」

「いちいちうるせえんだよ!俺たちはだ!そんな何処の馬の骨かもわからないチームなんかと比べんなよ」


肥大化しすぎたプライドは時に人を殺す。自分は強い、最強だの歌われ自分の力量さえもわからなくなり自分の力量に見合わない敵と戦い、敗れ落ちぶれていく…これが強者と呼ばれたもの達の末路だ。


「わかったよ…」

「そうだよ。それでいいんだよ!同じA級でも反吐が出る」


俺は一人だけでも地球に帰るために様々な文献や資料を読み漁っていたため、30層まで攻略できたチームのことを書かれた資料も見たため、このダンジョンのこともなんとなく知っている。30層に待ち構えてるのは暗黒竜グリードだ。かつての厄災とされ、世界の約三分の一を支配し、10を超える大国を滅ぼしたとされる特級厄災指定魔物だ。ダンジョン内である程度行動が制限されているとはいえ、古竜の一体。

戦う時は3カ国以上の軍隊での攻撃が推奨されているやつに勇者とはいえ30人そこらで倒せるのか?


「19層もこんなもんか」

「GYASSSSSSSSSS!」

「ん?なんだ?」


雄叫びが聞こえてきた。それも、今までの奴らとは隔絶な力の差を感じた。


「まっ、ただのワイバーンっしょ」

「余裕だな。1分で片付ける」


そう言って、1人の男子が出る。だんだんその姿が見えてくる。そこにいたのは、


「なっ!セブンテイルドラゴンだと⁉︎」

「なんすか?ただのクソにしか見えないっすけど」

「奴の尻尾が七つあるからセブンテイルドラゴンと呼ばれているが、そいつは10古竜エンシェントドラゴン

「はっ⁉︎こんなワイバーンみてぇな奴がか?はっ!笑える。俺が始末してやるよ!

ラティスレッドエンチャント!よしこれでテメェは終わりだこのやろぉ!」


そう言って。セブンテイルドラゴンの首を切り落とした。


「はっ!大したことねぇな、……どうした?お前らそんなに恐怖に怯えて」

「う、後ろ…見て」

「後ろ?」


後ろを振り返った。そこにいたのはが男子生徒のことを見ていた。


「はっ!なんで生きてるんだよ!首は切り落としただろなんでなんだ————。」


恐怖に怖気付き、動けなくなっていた男子生徒を喰った。


「「「「キャァアアアアアアアア!」」」」

「そんな…首は落としたはずだろ⁉︎」


バリバリボリボリと骨が砕ける音があたりに響く。ダンジョンにいるせいでその音が余計に反響して辺りに響いていた。


「くっそ!藤山の仇だ!このクソトカゲ!」

「待て!あいつは八回ぶっ殺さないと倒せないぞ!」

「ブレスがくるぞ!全員後ろに下がれ!」


後ろに下がることができずに俺たちはブレスを喰らった。俺は前衛職だが、全属性の魔法が使えるので、後ろに下がっていたため、攻撃は喰らわなかった。


「そんな…俺たちは勇者なんだぞ、こんなことで…」

「全員撤退だ!動けるやつは動けない奴らを抱えて逃げろ!ここは俺が抑える!」

「ありがとね〜称矢」


全員がいなくなって俺は目の前にいるセブンテイルドラゴンを睨む。

あいつは雷属性のブレスを放ってくる…そしてソロ討伐は前例は一つあるが不可能に近い。ここでやるべき選択肢は…


「聖なる光よ我らに希望を与え辺りを照らせ ライト!」


あたりを照らす魔法を使った。選んだ魔法が攻撃性がないため、セブンテイルドラゴンが疑問の目でこちらを凝視している。


「俺の狙いはこれだ!光量最大!」


あたりが一気に眩しくなる。あまりの明るさに目を開くことができない。


「GYAAAAAAAAAAAAAA!」

「よし、目眩しが喰らった!あとはここで逃げるぞ!」


そう言って俺はセブンテイルドラゴンから逃走した。



残り生徒数31/32

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