帰還と不吉な予感


今回話短いです。

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命からがらAランクダンジョンから撤退してきた俺たちは今、謁見室にいた。

ダンジョン変異の起きていた[深淵の森]はSランクダンジョン[氷華の番人]に変化した。変異の時に起きていたスタンピードは総合ギルドと冒険者ギルドが協力して残っていた魔物を討伐し、近隣に被害が及ぶことなく終結した。幸い、俺たちとリアムさんが相当数を討伐したおかげで、残党狩りをした冒険者たちにも死傷者は出なかったようだ。ダンジョン攻略や魔物氾濫スタンピードのことを話すために俺たちは今ここにいる。そうライオス様が聞く。


「此度のダンジョン攻略はどうしたのだ?」


早速だ。攻略については最前線に居て、スタンピードをいち早く見つけた俺たちが説明しなければ。答えたのは晴渡だった。


「ダンジョン内でスタンピードが起きたため、危険と判断し徹底してきました」

「起きたのは何階層だ?」

「五階層以下で発生いたしました」

「ふむ…ならそのまま攻略をしていて良かったのではないか?」

「えっ?」


今までとは違った答えに俺は思わず変な声が出てしまった。


「危機的状況でも冷静に対応して敵を倒す。それが“勇者“ではないのか?」


その言葉に対して今度は雅人が異を唱える。


「流石にSランク級20体以上を相手にするのは無理があると思います」

「ではSランクダンジョンに行ってもらうか。訓練のためにも」

「申します。今回の攻略で精神的に参ってしまっている人もいるのでしばらくはやめておいたほうがいいと進言します」

「それはそうだが、厳しい訓練をしなければ強くはなれないぞ」

「で、ですが…」

「君たちはまだ未熟だ。私たちの指示に従っていればいいのだ」

「それはあまりにも横暴が過ぎるのではないでしょうか?」

「黙れっ!」


突然ライオス様がキレたのだ。いつもは、怒ることなく周りの意見を尊重するいい国王なのがだ、今は自分勝手なことばっかり言って、周りを従わせてくる。


「貴様らに移住食を与えているのは誰だと思っているのだ!それくらいのことはしたがってもらうぞ。異議があるものは今すぐここから出てゆけ!」


(酷い…あまりにもひどすぎる。郷に入れば郷に従えってやつか…この人、今までこんな性格をしていたか?人が変わったみたいにおかしな言動になっているぞ。このままでは死人が出てしまう…)


「なぁ雅人?あの人、こんな性格してたか?」


隣にいた雅人に俺は話しかける。今と昔であの人は180°も性格が変わってしまっている。何か違和感がある。何かきな臭くなってきたな…


「違うねたぶん。どうしたんだろうな?あの人」

「何か洗脳でもされたんかな?」

「What the fack⁉︎」

「なぜに英語?」

「なんか気づいたら言っていた」

「いや怖ぇよお前」

「みんな部屋から出始めてる。さっさと帰ろっと」

「あ、話逸らしやがったなこいつ」


そそくさと逃げるように部屋から出ていく雅人の跡を追って俺は部屋から出ていった。帰り際、ライオス様の顔を見たが、焦点があっていない、で壁を眺めていた。部屋に戻り、さっき押し切れた次回ダンジョン攻略の準備を少ししていたら、もう夕方になっていたので、飯だけ食って今日のところは部屋にもどった。ベッドで横になりながらダンジョンでの出来事を思い出す。ダンジョン変異の時に攻略に行かせたこと、滅多に起きることのないスタンピード、その中から帰ってきた俺たちに慌てた王様の様子…


「なんだか点が線になってきたな…」

「ん?そうか?」


とっくの昔に寝たと思っていた雅人がいきなり喋ったのだ


「うわっ!ビビるじゃねえか」

「計画通り☆」

「じゃねえんだよバカ!」

「で、何かわかったのか?」

「ここ最近のことを思い出してみろよ」

「えっと、変異途中のAランクダンジョン攻略とスタンピード、あと称矢の暗殺未遂ぐらいじゃないか?」

「そうだ。なんかこの事件、何か一つにまとめられないか?」

「え?特に関係ないことばっかだ。ダンジョン系はたまたまかもしれないけど」

「いや違う。この三つのこと全てが共通していることは標的は全て俺たちだ」

「狙われているのが確かに俺たちだけど…考えすぎじゃない?」

「だといいんだが…」


そう言って雅人は寝てしまった。


「…なにも起きなければいいんだ。でも、俺たちはいつ殺されるかわからないんだ。以前のように見殺にさせたくない…考えすぎか」


そう言って俺は寝た。



朝起きてみんなのところに行くと、いつもとは違う光景が広がっていた

ダンジョン攻略がいつくるかわからない状況に空気はピリついていた。前回の攻略で大怪我や死にかけた人たちも前回のような絶望が始まってしまうと言って、部屋に引きこもってしまった。こんなことになるから連続したダンジョン攻略はやめといた方がいいと俺は思い、リアムさんに提案しに行く。


「リアムさん、やっぱりダンジョン攻略はやめませんか?」

「だよな?俺も思うんだがライオス様がそれを頑なに認めないんだ」

「みんな、スタンピードで死にかけたりしているので引きこもってしまってますよ」

「…もう一度俺たちだけで審議してみよう。流石に死人が出るようでは中止しざるを得ないからな」

「お願いします」


リアムさんが騎士団、魔法師団含めて会議を行い、ダンジョン攻略は見送るべきということをまとめた用紙を王に出したが、破り捨てて、

「何があってもダンジョン攻略は中止せん!これは絶対だ!」

と言い、部屋から出ていってしまったらしい。どうしてそんなにダンジョンに行きたがらせるのかが疑問になった。レベルを早く上げるならダンジョン攻略が一番だ。だが、無理な攻略をしすぎると帰ってリスクになる。そんな危険を冒してまで攻略させる意図が理解できない。死んでほしくない人材なら、無理せず、強くして、ある程度に対応できるようになったら討伐に向かわせればいい。時間はかかるがこっちの方が現実的である。


「全くもって意味不明だ。何か急がなければならないことが起きたのか?」


そんなこんなしているうちに攻略が強行された。

王様が無理を言って明後日に行うと言い出したのだ。王の命令は絶対…逆らいたくてもできなかったので俺たちは攻略準備をしはじめた。

前回の攻略から数日も経たないうちにダンジョン攻略が始まった。今回はSランクダンジョンの[古竜の巣窟]にきた。出てくる魔物は全てドラゴン関係のものしか出てこない難易度が少し高いダンジョンだ。


「まさか本当にくるなんて…」

「パーティごとに別れてドラゴン複数体に奇襲されたらどうしようもないね」

「お前ら聞け!ここは油断一つで命か消し飛ぶダンジョンだ。無論、他ダンジョンもそうだがここは格別警戒していくぞ。周囲に警戒しつつ行くぞ」

「「「「「了解」」」」」


俺たちの二回目のダンジョン攻略が始まった…

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異世界転移した召喚勇者の冒険譚 現役学生@アストラル @iwanamisubal

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