⍰⍰の森"攻防"③
「…倒した…のか?」
「魔石が落ちてるし、倒したんだろう」
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「かなりギリギリだったな…」
「…なあ、もう帰らないか?」
「どうして?まだポーションにもまだ余裕はあるし、行っても大丈夫だろ」
「まだ余裕があるってもたった4つだぞ?危険だ」
「大丈夫だって少し様子見だけだから」
「その油断一つで人が死ぬんだ!地上でもダンジョンでもその行動一つで状況が一変するんだ!その一つ、たった一つの行動で仲間を、俺はまた犠牲にしたくないんだ!」
「…なぁ なんで以前仲間を殺してしまったみたいなことを言ったんだ?」
「…………。」
「なぁ何か言ってくれよ!」
あたりに静寂が訪れた。響き渡るのは雅人や春渡の叫び声だけだった。
「おい!いつまで黙ってるんだ!教えてくれよ!」
「……わかった。以前何があったか話そう。一ヶ月前ほどにワイバーンの群れと戦ったよな?」
「えぇ〜と。あぁ、行ったな」
「その時たぶん戦った後のこと覚えているか?」
「なんか気づいたら街にいたことしか覚えていないぞ」
「お前ら、死にかけたんだよ」
「何のこと?死にかけたことなんてないぞ」
「やっぱり記憶が飛んでる…その時、お前らが死にかけた一部始終を話そう」
◇
「ニ体のワイバーンなんて余裕だな」
「大したことなかったな」
「ドラゴンの下位互換みたいなやつに今更遅れは取らないね」
雅人、愛莉、春渡の三人は固まって話していた。言われていたワイバーン二体を討伐して、のんびりしていた。その時俺は怪我をしていて木の下で休んでいた。怪我をポーションで直してそっちに行こうとして、時間を見るために空を見たんだ。お前らの10メートルほどにに一体の報告にはないワイバーンがいた。魔物を倒し終わっても魔物は来ること忘れ俺たちは油断をしていた。
「お前ら!そこから離れろ!」
そう叫んだがすでに遅く、ワイバーンに気づくことなくお前らは攻撃され、意識を失ったんだ。
◇
「…そんなことがあったなんて」
「その後、俺はなんとか残りを倒して、気絶したお前らを近くの街まで運んだんだ。ここはゲームの世界じゃない、現実だ。人は簡単に死ぬ。死んでも復活もできない。これは遊びでやってるわけじゃないんだ」
「…わかったよ。魔水晶に触れたらいったん帰ろう」
俺たちは魔石を拾い、ボス部屋の奥にある魔水晶に触れた。魔水晶は触れると、次の攻略時に触れた魔水晶の前から攻略ができる魔導具だ。触れて、攻略するか撤退するかはパーティにもよる。魔水晶に手を触れ、帰ろうもう一度触れようとしたら、魔水晶の光が消えていた。
「魔水晶が反応しない…なんでだ?」
「なんでだろうね。故障かな?」
「しばらく待ってみたらまた使えるようになるんじゃない?」
「まあ、待ってm なっなんだ地震か⁉︎」
突如、激しい縦揺れが起きた。何かがが激しく動き回って振動している感じだった。立っていられず俺たちは倒れる。その激しい揺れは1分も立たず収まった。
「…収まったのか?」
「多分そうだな。全員大丈夫か?」
「あぁなんとか」
「ねぇ、どこかから足音がしてこない?」
「後続が来たんじゃないか?」
「いや違う!六階層へ行く階段の方からだ」
「…何がくるんだ?」
「———っ!魔物だ!
「なっ!
「早くこっち来い!死にたくなけりゃな」
そんな会話をしている中でもどんどん魔物達は近づいてくる。
【
それは、ダンジョン内の魔物の量が一定数を超えると発生する災害。普段は起きることのない事だが、魔物の大量発生の時やダンジョン変異の時に起こりやすい傾向がある。溢れてきた魔物は地上に出て、近隣の街にも被害を及ぼすため、発見したら、すぐに報告に行かなくてはならない。
そして、スタンピードと遭遇した冒険者の中で生還者はゼロだ。
「あれを見ろ!」
「嘘だろ⁉︎」
そこにはAランクのアイスドラゴンやアイスフォックス、Sランク級の魔物ブリザードバードなど数百匹が来ていた。幸い、移動速度が遅いため逃げやすいが、移動速度の速い奴らはどんどん迫ってくる。
「くっそ!このままだと追いつかれる!来ている奴らだけでも叩くぞ!」
「血迷ったか⁉︎死ぬ気か称矢!」
「このまま逃げても追いつかれるだけだ。ならあいつらだけでも抑えたほうがいい!」
「わかった!三階層に行く階段前で迎撃するぞ!」
俺たちは急いで逃げてきた。道中の魔物を交わしつつ、スタンピードとの距離を取るために。
「あれ?称矢達じゃん。どうしたの?そんな慌てて」
奥に陽太と奏達がいた。
「いいから逃げろ!奥に行くと死ぬぞ!」
「だからなんでだよ」
「
「な、何⁉︎おい!逃げるぞ」
「キャアァァァァアァ!」
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「死にたくない死にたくない死にたくない!」
みんなはスタンピードが起きたと知ってパニックになっていた。
みんなを落ち着かせるために奏が叫ぶ。
「騒ぐな!居場所がバレるぞ!静かに逃げるぞ!」
「ダメだ!逃げきれない!この先の階段前で迎撃する!」
「無茶だ!死ぬ気か!」
「本隊を叩くわけじゃない!足の速い奴らだけを始末して逃げるんだよ!」
「わかった!お前ら、死にたくなけりゃ階段前で迎撃するぞ!」
俺たちは急いで階段前へ逃げてバリケードを張った。
全員で耐えるため、柵などを急いで用意して分隊の迎撃準備をした。
迎撃の準備が終わり前を見ると、まだ来ていなかったが足音が大量に聞こえてきた。
「来たぞ!気をつけろ!」
「「「「「「「「了解!」」」」」」」」
「ダイアウルフ、アイスフォックス、フォレストワイルドボアなどが百匹以上…これを捌き切るってのかよ!」
「やれるのかじゃない、やるんだ!」
「タンク職は前で抑えろ!アサシンなどの近接役職は怪我人をポーションなどで治療しろ、魔法使いなどは後方支援を!」
百匹以上の魔物と俺たちの戦いが始まった…
俺は、どんどん攻めてくる魑魅魍魎を切りつけていった。何体斬っても斬っても終わりが来ない。そんな絶望の中、俺達は魔物を倒し続けていった。
最初は勢いで攻撃してくる魔物が優勢だったが、聖女の凛が防護結界を張ってから形成が逆転し、残りの魔物は二十匹を切った…が
「くっそ!こいつら硬ぇぞ!」
「ダメだ!こっちも歯が立たない!」
残った魔物はSランク級の魔物がほとんどだった。Aランクでも手こずるのにSランクなんてほとんど戦えるものは少なかった。
「誰か、こっちを手伝ってくれ!怪我人の量がひどい!」
「うぐわぁぁぁぁぁ!」
「後方支援を頼む!近接攻撃がほとんど効かない!」
そのため阿鼻叫喚な光景が広がっていった。悲鳴や、誰かを呼ぶ声があたりに響いていた。
「…攻防戦をしてからもう二時間…まずい!」
三階層前での攻防が二時間以上経った…聖女である凛の防護もそろそろ魔力が尽きてきそうな頃でもあり、スタンピードの本体も来てもおかしくはない時間だった…
「そろそろ魔力が尽きます!それまでにどうにかしてください!」
絶望の知らせが聞こえてきた。これ以上は結界がなくなってしまう。
分隊を倒し切るまでは耐えてて欲しかったがA、Sランク級の魔物の攻撃が激しすぎて結界の損傷が酷く、予想していた消費量以上に魔力を使ってしまったようだった。
仕方ない…最終手段を使うか
後方支援組の方に俺は向かい一つ聞いた。
「魔法使いの中でアースウォールを一枚ほど張れるくらいの魔力が残ってる奴数人居ないか⁉︎」
「1枚くらいなら私できるよ!」
「私も!」
「お、俺も1枚くらいならできるぞ!」
「わかった。前衛が引いた瞬間に張れ!」
俺は前衛に戻りこう話した。
「今からアースウォールを展開するから、俺の合図で一気に後ろに飛べ!」
「わかった!」
「一度しかチャンスはない!そのチャンスを失ったらいつ来るかわからないぞ!」
「聞いたか!全員死力を尽くせ!」
攻撃をいなしている奴らの行動を見ながら俺はタイミングを見る。
魔物に攻撃をしたりかわしたりしてる奴らに無理がないようにタイミングを測る
「おい!まだチャンスはないのか⁉︎」
「まだだ!慌てると仲間が死ぬぞ!それでもいいのか!」
「チッ!わかったよ!」
前衛全員が攻撃をしたり、弾いたりして魔物が後ろに下り、攻撃が止んだ瞬間、
「今だ!一気に後ろに飛べっ!」
俺の合図と共に、一気に後ろに下がった。タンクは元々少し離れていたので回避は問題なさそうだ。
「「「「大地よ岩よ強く固まり壁となれ!アースウォール‼︎」」」」
魔物と俺たちの間に数枚の壁ができた。魔物達はすぐに攻めてこようと壁を壊そうとする。こんなの数分しか持たないが今はその時間が欲しい。
「一気に逃げろ!何分持ってくれるかわからないぞ!死にたくなかればさっさと引け!」
「私も防護結界も切るよ!早く地上に行って!」
俺たちはすでに満身創痍だが残った気力を振り絞って地上に向かって走った。三階層からは魔物の数が減っていたためスムーズに逃げることができ、なんとか地上に出ることができた。地上に出ると、リアムさん達がそこにはいた。
「ん?お前ら全員どうした?攻略できたのか?」
「はぁ…はぁ…——ド」
「何があったんだ?少し休め」
「
「なっ!
「冒険者だけじゃダメです!Sランク級の魔物もいました!軍隊でも来ないと鎮圧できません!」
「なんでSランク級もいるとわかったんだ⁉︎」
「ここに逃げてくる前に、迫ってくる奴らだけでも迎撃して倒した時に見たからです!」
「わかった!すぐに伝える!どれくらいでくるとか予想できるか?」
「アースウォールで妨害したとはいえ稼げたのは数分稼げるかぐらいだし一、二時間ほどで出てくると思います!」
「そんなに速いのか!わかった…お前らは一回休んでこい」
「いやです!俺たちも戦います!」
「そんな状態じゃ足手纏いだ。ここからは傭兵の仕事だ」
「無茶です!いくら強いと言っても数で押されれば対応できません!」
「いくら無茶をしてもみんなを守る。それが傭兵だ」
「リアムさん!」
兵士に運ばれていく中、1人だけダンジョン前に行くリアムさん何度も呼んだが聞こえていなかった。
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