対面する殺意②
「……っ!」
短剣が脇腹を擦る。なんとか、薄皮一枚で凌いだ。よし、ここから反撃…を
急に視界が狭くなる、体も痙攣しているせいか動かない。なぜだ⁉︎
「やっと攻撃が入った、攻撃ばっか交わしやがって。ようやく麻痺毒が入った」
「クソっ、さっきの短剣に塗られていたのか」
体の動きがさっきよりも鈍くなる、力も抜けて木刀が右手からカタンと落ちる。
俺は、自分の体に鞭を打ち、木刀を拾い構える。魔法を使うか?詠唱中に攻撃されたらたまったもんじゃないな…やっぱり近接攻撃しかないか。
光魔法のディスペルをかけようと思ったが、毒にも効果があるが術者の熟練度で効果が変わるため今の俺では麻痺毒には効果が薄いため、あまりかけても意味があまりなさそうだな…
「毒は解除しないんだな」
「生憎、熟練度が低いからやっても意味ないんだよ」
「ほう、いいことを知ったな。ありがとな、ガキが」
さっきよりもスピードが速くなってる!回避は…無理そうだな。怪我を負ってない時でさえ凌げなかったのに、麻痺してるこの状態で反撃なんて無理そうだな…やっぱり、覚悟決めて玉砕覚悟で攻撃しかないか…目の前まで迫るナイフに気付き、体を引いた。顔から血が垂れる。また食らった…どうする?やるしかないか?
「おい、さっきからかわすしかしていないぞ。もっと攻撃してこいよ」
その言葉を聞いた瞬間、俺の心に火がついた。やれること全部やってやろうじゃねぇか。例え、俺が死んだとしても。
俺は両手に持つ木刀を強く握りしめ、反撃に転じた。一気に距離を詰め、何回も切りつける。その攻撃を男は二本の短剣で全ていなす。俺が攻撃をやめ、距離をとった瞬間、男は隠し持っていた三本目の短剣を投げてくる。俺は木刀で短剣を弾き飛ばす。
弾いた瞬間、男に落ちていく短剣を見えないように拾い、隠して俺は反撃する。木刀を両手で斬りかかる。その攻撃を短剣の鍔で抑える。その行動を確認した俺はさっき拾って隠し持っていた短剣を男の投げつける。男は間一髪投げた短剣をかわし、後ろに下がる。
「やっと攻撃してきたか…さぁもっと楽しもうぜ」
「…くっ!」
だんだん全身が麻痺し始めてきた…全身が動かなくなるまでに決着をつけないと確実に殺される…短期決戦で決めるしかない。そう思い、玉砕覚悟で突撃を敢行した。
明るい場所では暗殺者の能力を最大限に活かし切れない今がチャンス。頬や太股の傷を負おうが気にせず攻撃を継続する。男は距離を取り何か呟いた。
「このままだと分が悪いな…」
そう言い、男はどこかから数個の石を取り出し検討はずれの方に投げる。何がしたいんだ?
そう思っていると、投げた石が少ない灯りに命中する。何やってるんだろうと思ってると男は答えをすぐに見せてくれた。灯りが全て消え、新月の夜も相まって建物内が暗闇に包まれる…まずい!そう思った時には全て遅かった…
暗闇になった途端、辺りが見えなくなり攻撃と防御がほぼできなくなった…
足音を頼りにしようとも、相手は暗殺者。足音を消して攻撃してくるため回避の仕様がなかった。闇雲に振り回しても当たるはずもなく背後を取られ切られていく…
数分もしないで俺は全身に傷を負ってしまった…まだ辺りは暗闇…今もどこかで俺のことを見てるに違いない。
「こんなことで大量に怪我を負うのか…所詮勇者はこんなもんか」
「……っ!お前っ!」
背後から声がした。その言葉は俺に対して言ったことだろう。でも、俺は違う意味で感じた。所詮、勇者はこんなもんかその言葉は俺の大切な
多少暗闇に慣れた目を頼りに一瞬で、相手との距離を詰め、何度も切り掛かる。その攻撃を男は最も容易くいなしてくる。渾身の力をこめ、男に攻撃をする。相手は二本の短剣をクロスさせ、防御姿勢を取った。それぞれの武器が当たった瞬間、ガキン!と音がし、火花が散る。
「そんなに怒り任せに攻撃すると危ねぇぞ」
その言葉を無視し、攻撃を続ける…許さない、許さない!そんな思いで俺は攻撃を続けた。攻撃の合間合間に短剣を斬りつけてくる。短剣が顔の横をヒュンと風を切る音を立て、横切る。短剣を突き出して無防備になった瞬間に回し蹴りを入れた。
男に命中し、吹っ飛ぶ。いける!このままいけば勝てる!そう思って距離を詰めた…しかしそれは男の狙いだった。起き上がり、短剣を投げてきた。怒りで視野が狭くなっていたため、此方に迫ってくる短剣に気づけなかった。短剣が俺の脇腹に刺さる。
今まで感じたことがないほどに痛みを感じ、俺は倒れた。短剣の刺さっている脇腹からは生暖かい液体が流れ出て、体が焼ける様に熱い…俺…ここで死ぬのか?
死期を悟った俺はいくつか疑問に感じたことを聞いた。
「なぁ、最後にいくつか聞いていいか?」
「いいだろう。お前は俺が戦ってきた奴らの中でトップクラスで強かったからな。
いいだろう」
「お前はなぜ、雇い主である野島を脅したりしたんだ?」
「…そこを見られてしまったか…仕方ない。話そうじゃないか。
あいつは元々、俺たちに金を払う気なんてさらさらなかったからだよ。
自分は最強の勇者様だ!とか言って自惚れている奴らだ。なら自力で殺せばいいはずなのに、俺たちを頼ってくる…自分達も弱いくせに人を見下し、駒扱いにしてきた。だから俺は脅した…あいつらがこちらの指示を聞くように」
「…こちら側の…指示?」
「あぁそうだ。今頃、王城内はパニックになってるんじゃないか?」
「なっ!どうして」
「あいつらが、全員に暗殺者に狙われていると言ったんだ。それもお前からの命令でと言ってな」
「そんな…信じるわけがないだろ」
「あいつらの捕まえた偽物の暗殺者がそう言ったらどうする?決定的な証拠になってお前は追放される。最悪の場合処刑もある」
「どうしてっそこまでするんだよ…」
「さぁな。俺が言えるのはここまでだ」
野島!お前、俺が殺されたら末代まで呪い殺してやるっ!黒い感情を出す。
しかし、ふとあることに気がついた…
「なぁ。なんでお前は俺を殺さないんだ?」
「……。」
「さっき殺したではなく戦った中で、と言ったはずだ。なぜ、対戦相手が生きているみたいな発言をしたんだ?」
男は無言を貫く…何か裏がありそうだな。そういえば以前、リアムさんが意味深な発言をしていたな
◇
「潰したくても潰せなかったあそこか…面白い」
◇
まさか、リアムさんはこいつと戦ったってのか!?だから『俺が戦ってきた奴らの中で』と話したのか。1人を殺し損ねたから言い方を変えたのか。
でも、あのリアムさんですら倒せなかったこいつ…相当強いんじゃね?
元“S級冒険者“の可能性もあるな…何人かは引退したらしいし、可能性はあるな…
「お前、ひょっとして元S級冒険者だったりしないか?」
「そうだ…私は元S級冒険者で
二つ名が[常世の死神]だ」
(何この二つ名…ただの痛い厨二病やん。作者もそうなのかな?)
「あ“ぁ?テメェ、何かよからぬことでも考えたか?」
「…い、ぃやそんなこ、ことは考えてね、ねぇよ」
「まぁいい…さっさと死にやがれ」
そう言ってどこかから取り出した短剣を振りかざす…俺はもうダメかもな…
陽太、ごめん。お前との約束、守れそうにないな。
死を悟り目を瞑る、俺はもう死んだんd……あれ?死んでない?
「なっ、なんでお前がっ!」
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今日は二本投稿するよ〜 投稿分1/2
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