対面する殺意①
ご丁寧に暗殺者から手紙が届いて、予定の日が来た。
俺は今日これまでに、さまざまなことを勉強してきた。呪いとかの状態異常に耐えられるように光魔法Level2のディスペルも即時展開して発動できいるようになったし、剣のいなし方などを短期間に身につけた…もっとも、剣のいなし方の練習の時のリアムさんはこう、怖かった。鬼神のような顔で切り掛かってくるあの姿は…思い出すだけでも狂気を感じる。それらの訓練のおかげでそこそこ強くなった。
俺は万全な準備を終えた。
手紙で指示された当日、重要な会議という名目で訓練は中止になった。元から決まっていたことらしいが、このことはほとんど知られていないらしい。
俺たちもそのことをさっき知らされた。
なんだって警備のために、第一騎士団と第一魔法師団をあたらせているらしい。リアムさんもリナズナさんも警備に当たっているため、訓練は実施が不能だ。
こうなることがわかっていたのか?俺の暗殺に邪魔が入らないように…
王族関係者の中でも限られた人にしか晒されていないこと。それを知っていた…黒獅子は何者なんだ?まさか、王族関係者に裏切り者が?
そんなことを考えていると雅人がやってきた。
「訓練なくなったね」
「そうだな…ま、いっしょ。たまにはこういう日があっても」
「今まで学校みたいに朝から夕方まで訓練していたし」
「学校…か、懐かしいな」
「そうだね、授業ないから抜き打ちテストないし」
「だったら今からやるか?」
「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」
担任の朝倉慎二が突如言ってきたことに対し、俺たち全員は同じことを言った。
「えっ?いやいやいやいや!勉強できないし」
「数ヶ月前のこと覚えていないって」
「はっはっは。ただのジョークだ」
「「「「「「「「「いや笑い事じゃない(ですよ)(よ)!」」」」」」」」」
正直言って俺も少しヒヤッとした。俺もそこまで勉強ができるわけでもないし、成績もボチボチだ。ノー勉でテストをしようものなら見事に壊滅だ。
雅人に関しては、手が痙攣している…どれだけダメなんだよ、見た目できそうなのに…
その後、部屋に戻って寝たり書斎で本を読んで時間を潰した。
予定の時刻が迫ってきた。もう辺りも暗く、ライトが無ければ暗闇だ。
かなり暗い…正直言って少し怖い。城の方を見るとこの時間でもまだ会議室は明かりがついている。まだ会議は終わっていないようだ。
雅人が寝ているのを確認し、ゆっくりと扉を開ける。ひんやりとした風が部屋の中に流れてくる。その風で雅人が動かないか見ると、懇々と寝ている。
「じゃあな…後で帰ってくる」
俺はそう一言残し、窓枠に手を置き意を決して飛び降りた。
真下の屋根に飛び降り、屋根上を走っていく。三つほど屋根を飛び越えると城壁が目の前にあった。端までついた。
城壁をよじ登り、辺りを確認し巡回の兵士が通り過ぎたのを確認して飛び降りた。
ここからはほとんど来たことがなく、道が不安だが、ご丁寧にも手紙の中に地図が入っていた。地図を頼りにできるだけ人通りのゼロの道を通っていく
「ここか…」
そこにつくと、一つの廃墟があった。そこはもともと、民間のギルドの本館だ。地図を見るとどうやら中らしい…俺は扉を押し、中に入った。
気配はないな…そう思って中に入ろうとした時、誰かが来た。
全身真っ黒の服を着た男が話しかけてきた…大方俺を殺そうとしてきた暗殺者と言ったところか
「ずいぶん早かったですね」
「なんで、ここに呼んだんだ?奇襲した方が可能性はあるだろ」
「わざわざこちらが出向いて仲間が犠牲になるよりきてもらった方がいいので」
「そうか…で、お前は誰に雇われて俺を狙ってたんだ?」
「察しがいいですね。規則上主人の名前は公言しないので」
「はっ、暗殺するのに規則ねぇ」
「話もここまでにしましょうか。ではさようなら」
そう言って俺の視界から姿が消える…どこだ?どこ行った?
辺りを見渡してもどこにもいない…灯りが多少あるにしても暗すぎて姿が同化して見えない。
「そんな辺りを見渡しすぎると危ないですよ」
後ろから声がしてきたその瞬間、反射的に前に飛び攻撃を避ける。
男の手にはナイフが握られていた。
「あっぶね…後少しでやられるとこだった」
「さすがの反射力ですね。相手が勇者では効果がないですか…」
相手もこちらが誰か知ってはいるのか…これはまずいな…
スキル剣召喚で木刀モドキを出し、攻撃体制をとる。
「スキルを使いましたか…ですが、木刀では私に傷はつきませんよ。その木刀切ってあげましょう」
「それはどうかな?」
高速で俺の間合いを詰めてくる。俺は斜めに木刀を振う、それを狙っていた男は横にズレ、短剣で切り掛かってくる。俺は、木刀でナイフの攻撃を凌いだ。
「え?普通は切れるはず…これ本当にミスリルの短剣か?」
「これは木刀じゃない
「嘘…だろ?」
狼狽える男は、バックステップで後ろに下がり、ナイフをもう一本取り出し、二刀流になった。ただでさえ、今の攻撃を見切るなんて無理なのに攻撃が増えるのは勘弁願いたい。と思ったところで変わるわけもなく、突っ込んでくる。
俺は木刀を構え直し、次に来る攻撃に備える…この戦いは厳しいものになりそうだ。突っ込んでくる男は右手に持っていたナイフを投げつけてくる。
俺はナイフを木刀で打ち払い、せめてくる攻撃に構え直そうする…が、
目の前まで迫ってきていた。木刀を横薙に剣を振う。恐怖心から目を瞑ってしまったが、ガキン!と木刀からは聞くことのない音が聞こえてくる…なんとか攻撃に間に合ったな。ナイフにより一層力をこめてくる。単純的な力勝負では俺には分が悪い。ナイフを払い、お互いに距離を取る。
「この攻撃もかわしますか…まだまだ修行をしないとな」
「生憎、剣技のスキルはLevel6まで育っているもんで」
「私は短剣術と暗殺術がLevel8ずつですね」
やはり、この強さは伊達なレベルじゃ無いか…攻撃をかわしつつ、隙を窺って攻めるしか無いか…。リアムさんの言う通りか。
[自分より格上の相手に対しては攻めず基本、守りの姿勢で戦え]
自分で戦に行って隙を突かれるより、守りの姿勢で攻めた方が勝算はあるからな。
「自分より格上の相手に対しては攻めず基本、守りの姿勢で戦え…でしたっけ?」
「……っ!」
「その行動はあの人の口癖でしたよね。」
「な、なんで知ってるんだ?」
背中から嫌な汗が滲み出てくる…なんでそのことを知っているんだ?
「以前、その言葉を聞いたことがありまして」
「…以前?」
「おっと、これ以上話はやめましょうか」
また視界から消える…またこれだ。どうせまた後ろから攻撃してくるんだろ、そう思って俺は後ろに木刀を振りかぶる…予想は当たっていた。また後ろから切り掛かってきていた。
「これを防ぐか…やはり、一撃で仕留めないと対応されますか」
「同じ攻撃しかしないな、なんだ?技がないのか?」
「そこまで言うならいいでしょう。今まで手を抜いてきましたけど、全力で殺りましょう。…すぐに死ぬんじゃねぇぞ」
さっきとは変わった。構え方、気迫、喋り方までも別人のようになった。
さっきまででもキツいのにさらに悪化した。…無理だ、逃げるか?
そう思い、ドアの方を横目に見ると、釘で固定されていた…俺は舌打ちをしつつ目の前を向く。この勝負、逃げようにも逃げられないな。
「おい、まさかここまできて逃げ帰るのか?」
「いや、まさかな…邪魔が入らないか確認しただけだ」
「変に強がらなくていいんだぞ、ガキが」
そう言って攻撃してきた。さっきよりも数倍早い!これはかわしきれない!
俺は凌ぐのは無理と判断し全力で体を捻ったが、短剣が脇腹を擦った。
「……っ!」
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