一つの決意
キラッ!
「しまっt「うっ…何処かから監視されているのか?」
まずい、バレてしまった…曇りで満月のことをすっかり忘れてた…
「早く逃げますよ、気づかれてしまったら仕方ない」
「わかりました」
今日は満月だって注意されたのに…俺の失態だ…
「監視に気づかれてしまった以上早急に暗殺に来るでしょう。
いつも以上に気をつけてください」
「バレてしまったら計画を中止にするのではないでしょうか?」
「それはありません」
キッパリと否定をされた。
「どうしてですか?相手にバレてしまったら、対象の警備が厳重になったりして暗殺難易度が高くなるのになぜですか?」
「彼らは金のために働くからだ。報酬は白金貨100枚、これは2年間貴族のような優雅な生活ができるほどの大金です。そのため、なんとしてでも欲しいはずです。あなたを殺す際、恐らく周りの人間も抹殺するでしょう。その時に例え、仲間を何人も失ったとしてもね」
「そんな…」
「ですので、どれだけ警備が厳重にしても意味がないということです…
あとは己の実力で戦っていくしかないです。私もできるだけサポートはして行きます」
バレてしまったらより攻撃が激しくなるのか…。そんな…俺のミスで余計窮地に立たされているじゃないか…自分のミスは自分で取り戻さないと…
[人を殺す覚悟・殺される覚悟]俺は決意した。ここでやらなきゃ殺される…
「とりあえず部屋に戻ってください、私は王に報告をしてきます。
部屋に戻ったら大人しくしていてください」
「わかりました」
俺は部屋に戻った。そこでは雅人がこちらを不思議そうに眺めている。
予定より早く帰ってきたからだろうか?
「早かったね。何かあったのか?」
「あぁ………」
「無理には言わなくてもいい。しばらく休んだら教えてくれ」
「すまない…ありがとな」
そう言って俺はベッドに倒れ込んだ…
あのとき、俺があんなミスをしなければ…なぜ、忘れていた?満月のことを注意されたのに…俺のせいだ。だめだ…こんなことしか考えられない。
体を起こした。顔色も悪いだろう。自分でもわかるほど体調が悪い。
「おい称矢。無理はしなくていい。もう休め」
「…ボソッ。」
「どうした?聞こえないぞ。何か言いたいことがあるのか?」
「俺のせいだ。俺のミスのせいでこんな…」
「落ち着け、何があったのか話せる範囲で教えてくれ」
俺は全てを話した。
今日の監視の時に満月だということを注意されたのに、曇りでそのことを忘れ、双眼鏡を使ってしまったこと。自分のミスでいつ殺されるかわからないこと、こちらが監視していることがバレてしまった相手は暗殺がバレたと思い、手段を問わず俺を殺しに来るだろう。それで、お前らが巻き込まれるかもしれない。
…だが、俺は一つだけ話さなかった…それは前回の監視の時気がついたことだ。
あの時、悟は暗殺者に何かを渡され、脅されたことを…
「そうか…そんなことが…」
「…。」
「気にするな。元々こんな状況だったんだ。今更変化は特にないだろ」
「ははっ、それもそうだな…ありがとな、雅人」
(これは相当精神に応えてるみたいだな)
「もういい。休め」
俺は言われるがままに寝た。
意識がだんだん遠のいてくる、雅人は何か話しかけてきた。
詳しく聞こえなかったが、言いたいことはわかったような気がした…それ以降の記憶は無い。
「…………………ん…ふわぁ……」
起きると次の日になっていた。長時間寝て体調は万全なはずなのに、体が重く感じる。次の日とは言ってもまだ早朝…誰も起きていない。
昨日のことを思い出そうとすると、わずかに頭痛が起きた。それほどあの事がトラウマになっているようだ。
「自分で招いたことは、自分でなんとかしないとな…」
そう呟き、俺はあまり音を立てずに起き、書斎に向かった。この時間、書斎には誰もいない。早く起きた俺は、暗殺者ギルド黒獅子について調べることにした。
「聖なる光よ我らに希望を与え辺りを照らせ ライト」
光魔法のレベル1の辺りを照らす魔法を発動した。この魔法は灯りを眩しくしたり暗くしたり光度の調節が可能だ。みんなが起きないように灯りを暗くし、向かった。
書斎に着くと、あかりのついていないせいか不気味なオーラを醸し出している。
中に入り、近くにあったランプに火魔法で火をつけ、本棚の方に向かった。
以前ギルド関連の本を見つけた記憶を掘り返しながら一つの本棚に近づいていく。
「えっと、ここら辺のはずだけど……あ、あった」
俺はお目当ての本が見つかった。その本の名前は、[ギルド(危険)一覧]
この中には、現存する暗殺者ギルドや、もう解散したもの一覧表である。
ページを開き、目次を見て現存するページを開いた。
今あるギルドは全部で15。その中で、歴代トップクラスで危険なのが、二つ。
ギルド冥界と俺を狙っている黒獅子の二つだ。
「そんなやばいとこに俺は狙われているのか」
「何みているんですか?」「うわぁ!…ってなんだ、リオさんか。心臓に悪い」
「すみません。何か熱中していたので。で、何みてるんですか?」
「あ、いや別に何も…」
俺は、さっきまで読んでいた本を隠した。
本音は聞きたいが、バレたくないし危害を加えたくないから俺は本を隠すことにした。
「どうして隠すんですか?何か事情でも?」
その言葉を聞き、俺は言い出そうと思った。…が、前に記憶が蘇り気持ちが悪くなる。
「別に教えてくれなくてもかまいません。ですが、言いたいことは言ったほうがいいですよ。私にも何か一つくらいはできるはずです」
言いかけようと口を開けようと下が、やっぱり迷惑はかけたくない。その思いが勝ち、俺は口を閉じた。
「私も昔、ほとんど喋ってこなかったです。いじめられて、脅され言いたいことも言えない生活を続けてきました」
意外だった。こんな優しい人もいじめられる…やはりどこへ行っても同じなのか…
「いじめられて、そのことを伝えようものなら前日の倍いじめられてきました。
言いたくても、怖い。そんな思いで、私はずっと耐えてきました。しかし、
そんな生活をずっと続けてきて数年が経った頃、ある人に出会い私はあることに気がつかされました。それは『どんなに傷ついても諦めない心』です。
どんなにいじめられてもそれに立ち向かう気持ちが大切だと教えてくれました。何十年も前のことで顔は覚えていませんがそのことを鮮明に覚えています。今となってはもう会えないかもしれないですが、自分を変えるなら今が、最初で最後です」
一つ一つの言葉が心に刺さる。自分のせい、自分のせいとして、自分を傷つけても過去は変えられない。でも、未来は変えられる。そのことに気づかされた。
「ありがとうございました」
ふと、無意識に感謝をしていた。熱い何かが頬を伝う。泣いている。
「こちらこそ、ありがとうね」
俺は本をしまい、書斎を出た。
気づくと、もう夜が明け始め、明るくなってきた。かなり長い時間いたようだ。
早く帰らないとまずいと思い少し走って帰る。
部屋につき、扉を開けようとした。扉の前に何かが落ちている。落とし物だろうか?拾い上げ確認してみる。
どこかでみたようなロゴが見える。黒い獅子のマークで止められた手紙だった。
開けて確認する。
次の新月の夜。王都にあるここに1人で来い。少し話をしよう
それを見て全て思い出した。
「…やってやろうじゃねえか」
そこにあったのは、黒獅子からの手紙だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます