監視と気付き

監視をすると言ったその日の夜。俺は野島の部屋が見える屋根に登り、監視をしていた。俺の隣には黒のフードを被った人がいる、その人はこの国の諜報部の一人らしい。名前は明かさずコードネームだけ教えてくれた。コードネームはブラックバードと呼ばれているらしい、実際、見てみると明らかに手練れの動きだった。俺たちが監視していることも知らず悟達は部屋でのんびりしている。


「特に変化はなさそうですね」

「変化はありましたよ」

「え?あったんですか?」

「少しうるさいですよ、ターゲットに見つかってしまいますよ」

「すいません…気をつけます」


 その後、諜報員の人と俺は双眼鏡で監視をしていると明らかに悟の動きが変わった…ような動きをしていた。


「あれ?なんか動きが変わった?ような気が…」

「変わりましたね。少し隠れましょうか」


 俺はここにいていいのかと思うだろう。俺の部屋に幻覚を見せる魔道具を置いてある。ある程度の動きをするように見せるが、直ぐバレてしまうため俺は雅人に事情を説明し幻覚に話しかけている。本人曰く、

「これやばいやつに見えない?1人で喋ってるやつって」

 気にするな…そしてすまん。俺を恨まず暗殺しようとしてくる悟に言ってくれ。


「あ、何か来ましたね」


別の屋根伝に何かが来た。どうやらあれが、俺を狙っている暗殺者らしい。

それを確認した悟達は、同じ部屋の影宮彰人に何か言い、外に出て行った。

暗殺者は辺りを確認し、窓を開け悟の部屋に入っていく。そこで少し話ている。


「何を話しているんですか?」

「わかりません…ですが、行動的に重要なことを話していそうですね

 例えば““とか」


そんな話をしていると、暗殺者は悟に何か紙を手渡した。

悟は紙を確認して顔が青ざめ、暗殺者と何か口論になっていた。


「なんでしょうか?」


 そう聞くと突然横にいる諜報員の人が頭を押さえてきた。


「少し動かないでください。バレますよ」


 見ると暗殺者はこちらの方を見ていた。しばらくこちらの方を睨み、何もなかったのか悟の方へ向いた。


「あまり双眼鏡を覗きすぎないでください。月明かりでレンズが反射してこちらの位置がバレてしまいます」

「わかりました」


そう言われ、俺はポケットにしまった。

視点を戻すと突然、暗殺者がナイフを悟の方へ向け、脅していた。

暗殺者は何かを悟に言った。悟は首を振って断っているが、暗殺者はナイフを悟の首元に当て、もう一回話しかけた。悟は言われるがままに首を縦に振った。

それを確認した暗殺者は窓から出ていった。


「私は、暗殺者を追跡します。あなたは部屋に戻ってください」

「わかりました」


俺は地味に怖かった屋根から降り、部屋に戻った。部屋に戻る時に部屋をノックし、魔道具を雅人に切ってもらい部屋に入っていった。


「どうだった?」

「確定だったね。悟の部屋に人が入って行ったよ」

「そうか、まさかそんなことが起こるなんて…このことは誰が知ってる?」

「王とその幹部、リアムさん、リズベルさん…そしてお前だ」

「みんなには知らせないんだね」

「知らせたらどこからバレるかわからないからな、しばらくはこんな感じの生活が続きそうだ」

「まじか〜勘弁してよ」


翌日、悟の様子が変だった。何かに追われるようにずっと動き回っていた。

俺は気づかないふりをして話しかけた。


「どうした?そんなに焦った様子で」

「な、なんでもない…さっさとどっかいけ!」

「わ、わかった…」


明らかに行動や言動が変わっていった。いつも一緒にいるメンツにもキレたり、物に当たるようになっていた。昨日まではどうということもないのにおかしくなった。

確実に昨日のことが原因だ。俺はそんな中、訓練に励んでいた。相変わらず悟は全然来ない。

何も困ることはないが、昨日のことや今日のことから何処か心配になる…って

だめだ、あいつは俺を殺そうとしてるんだぞ!惑わされるな。

それからも監視を行なった。俺はずっと監視にいるわけもなく、魔道具をしばらく使っていると部屋にいないことに気づかれてしまうため、部屋でのんびり過ごしたりしていた。その間にも悟の連れからの嫌がらせは続いた。

物を隠されたり、勝手に部屋に入られたり根も葉もない噂を流されたりした。


「あいつらは悟を心配しないのかよ」

「そうだよな、あいつらキチガイにも程がある」

キチガイ悟達って…」

「実際そうだろ?自分たちの主人が何かに怯えていても称矢を攻撃する…

普通は心配するのに全くそのそぶりを見せないからキチガイ悟達

「あははは…(ド正論すぎて草)」


 その後、俺は謁見室に向かった。監視の報告をするためだ。

着くとそこにはライオス様とリアムさんがいた。


「おう、きたか。で、監視はどうだ?」

「バレずにやれています。一つあれば屋根が高すぎて怖いくらいですかね…」

「ははははは。ではリアムに高所訓練をつけさせるかのぅ」

「わかりました」「死んでしまいます」


同時にしゃべった。リアムさんに高所訓練なんてさせたら毎回死傷者が出るわ!

殺す気か⁉︎ライオス様は。


「まぁ冗談はよしとして、こちらからも一つ報告がある」

「なんでしょうか?」

「先日、暗殺者を追跡していたブラックバードから情報が来た」

「ブラックバード…あぁ、あの人か」

「そうだ、わかったことが暗殺者ギルド黒獅子が関わっていた」


。その言葉を聞いたリアムさんの顔色が変わった。さっきまで笑っていたのに顔が変わった。口は笑っているのに目は笑っていない。


「黒獅子ですか…」

「困ったのぅ…」

「あの、それほどやばいやつらなんですか?」

「あぁ、奴らは王都にアジトのある超一流の暗殺者ギルドだ」

「潰したくても潰せなかったあそこか…面白い」


リアムさんの言葉には何か裏がありそうだ。今度調べよう、か。かなり大ごとに巻き込まれたそうだ。


「とにかく、気をつけてくれ。あれは関わってはいけない。王都近辺の市民からそう言われるほどの危険な犯罪者集団なのだ」

「わかりました」


俺はそう言って部屋を出た。黒獅子…か。面白い、やってやろうじゃねーか。

その日の夜、今日は監視に参加する日だ。


「今日もよろしくお願いします」

「気をつけてくれ、今日は満月だからいつもより気をつけろ」


そう言って監視を始めた。とは言っても前から特に変化はない。

今日の天気は曇りで、満月といっても新月の時のような暗さだった。

悟はずっと何かに追われているように動き回る。しばらく見なかった原因はそれか。


「あの、何か変化ありましたか?」

「いえ、ありません。特に動きはないですね」


特に動きはなかった。ここ最近は毎日のように暗殺者とコミュニケーションをとっていたのに今日は特に動きもなく過ごしている。


「不思議ですね。いつもより行動が少ないですね」

「“何か必要なこと“でもしているのでしょうか」


必要なこと…なんだろう?わからないな。

監視を続けて早一時間。動きは特にない。こんだけ行動がないと流石に違和感を覚えてくる。どこでバレんた?


「こうなってくると逆に怪しくなって来ますね。こう、悟さんが揺動しているようにしか」

「“揺動“ですか?」


そんな感じには見えないんだよな。ほんと朝の会話的にも何か焦っているように見えたし。何か脅された感じかするんだよな。

雲が晴れ、月がうっすら見え始めてきた。風が僅かに吹き始めた。

風で横に置いていた双眼鏡がカタンと音がし、倒れてきた。

キラッ!っとレンズが反射し、悟に当たってしまった。


「しまっt「うっ…どこかから監視してるのか?」

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