初のクエスト ③

北西に向かってしばらくが経った。森もかなり奥まで来ていた。

まだ日中のはずなのに森は薄暗く、不気味だった。

そんな森の中を俺たちは進んでいた。


「なぁ、ほんとにここで合ってるか?」

「わからないけど森の入り口よりも、確かに魔物の数が増えてきたね」

「魔素の濃度もかなり高くなってきたし、そろそろついてもおかしくはないけど…」


森の奥深くに来て、なかなか着かないため俺たちは少し焦りを感じていた。


「こっちの方角で合ってるはずなんだけど…」


方角を教えてくれるオリビアは申し訳なさそうに言ってきた。


「気にしないで。もう少しで着くよ」

「そうよ、きっと着くわ」

『皆さん…ありがとうございます』

「あっ、見て!森の一部が切り倒されて平地になってる」

「着いたな」

「妹を、取り返しましょう!」


オリビアの目に一筋の希望が見えた。

俺たちは、切り開かれた土地の近くに行くと驚愕した。そこには、

10軒以上が立ち並んだ集落があった。


「おぉ、これはすごいな」

「かなり大きな集落ですね、これはゴブリンのも多そうですね」

「この大きさだと普通に攻めても歯が立たない。何か作戦を立てよう」

「そうね、何かいい案はないかしら…」

「あ、なら二手に分かれて攻めるのはどうでしょう?」


オリビアが提案してきた。


「「「二手に別れる?」」」

「そうです」

「でもどうやって別れるの?」

「そ、それは…」


しどろもどろになってしまった。詳しくは特に考えていないようだった。


「でも、いいかもね」

「どうして?」

「片方を陽動隊でもう片方を本隊にすればいいんじゃない?」

「魔物相手に効くの?あいつら思考できないでしょ」

「上位種相手だからこそできる戦闘だよ」

「確かに、行けそう」

「でもどうやって振り分けるんですか?」

「「「「あっ…ダメじゃん」」」」


でも、オリビアは言ってきた。確かにできても結局は原点に戻る…

今までの会話はなんだったんだ?


「では、私たち兵士がその任を受けましょう」

「えっ、良いんですか?」

「はい。問題ありません」

「大丈夫なんですか?


口を揃えて兵士はこう言った


「「「リアム隊長の訓練に比べればまだマシです」」」

「マジかよ…やっぱあの人頭おかしいんじゃね?」

「はい、あの人頭おかしいですからね…」


【sideリアム】

その頃リアムは森の浅層で兵士と雑談をしていた…


「いやぁ招喚された全員、強いですね」

「そうだな、すぐ越されそうだし俺らも強くならないとな……ヘックシュン!」

「大丈夫ですか?」

「あぁ、大丈夫だ…誰かが俺の悪口でも言ったか?」


その言葉にビクリと反応した兵士は目を逸らしながらこう言った。


「そ、そんなことをい、言う人もい、いるんですね」

「おい、その言い方何か裏があるだろ」

「そ、それはないです!言い切れます。隊長!」

「そうか、ならいいが」

(あっぶね!心の声が漏れたかと思ったわ!)


【side称矢達】


「ゴブリンソルジャー・ゴブリンナイト・シーフゴブリン・マジックゴブリン…ここはゴブリンの集会所か?」

「こ〜れはひどい☆」

「ふざけてないで緊張感持ちなさい。」

「じゃあ頼みましたよ

「アルバです…名前覚えてください…」


俺たちと兵士たちで別れ、兵士たちは正面門の木の影に俺たちは反対側の小高い丘の上で待機していた。奇襲時に挟み撃ちにする計画だ。

俺は、剣召喚のスキルを試すべく、木刀を持っている。


「あんたその木刀で切れるの?何か特殊効果があるの?」

「剣を自在にできるぐらいかな?伸ばしたり縮ませたりできるぞ」

「そうじゃなくて切れ味!きれなかったら意味ないでしょ」

「そうだな…試しに切ってみるか…とりゃ」


俺は近くの木に向かって切った。すると…バタン!

太さ50センチほどの木が真っ二つに切れたのだ!それを見ていた近くにいたらしい魔物も一斉に気絶してしまった。


「「「「は?」」」」


青ざめた顔で春渡が雅人に話しかける。


「あれ、木刀って言う?真剣じゃないよね?」

「…あぁ違う絶対違う」

「なんなのよ、馬火力すぎじゃない」

「切れ味はわかったしオッケー」

「「「オッケーじゃねえ(ですよ)!」」」


そんなことをしていると、兵士たちことアルバ達は陽動を始めていた。


「そんなことしてんな!もう始まってるぞ!」

「マジ?わかった。全員静かにしろ」

「「了解」」


俺らはバレないように木の影に隠れ、五分ぐらいアルバたちの様子を見ていた。

その間にもアルバ達にはゴブリンの群れが突撃をかましている。それを意図も容易くかわし、討伐し続けている。その間ひとつ思った

((((これ、俺(私)ら必要?))))


「もう大丈夫そうだ、奇襲をするぞ、バレるんじゃねぇぞ」

「「「「わかってる(ます)(わ)」」」」


俺らはバレないように集落の中へ入っていった。

集落の中は縄文時代?のような建物が多く並んでいた。アルバさん達が気を引いているので中には一体もゴブリンはいなかった。


「ボスはどこだ?」

「どこにもいないな」

「あ、あれじゃないか?」


そこには、アルバ達を椅子に座って遠くから見ている明らかにゴブリンキングですよって言ってるような奴がいた。そこには数人の子供がいた。その中にオリビアの妹もいるようだった。


「よし、行くぞ」

「「「了解!」」」


俺らは、バレないように子供達の近くまで走った。ゴブリンキングはアルバ達に目が行っているようで気づいていなかった。

子供達に俺は黙っているように口に人差し指を当てジェスチャーで黙っているようにと指示をした。子供達はコクコクと頷いた。


「…助けに来たよ」

「急ごう、アルバさん達がいつまで持つかわからない」

「そうだな」


俺は、子供達を引き連れ逃げようとした。が、1人が立てかけてあった棒にあたり、音を立ててしまった。それに気づいたゴブリンキングは剣を持ち、走ってきた。


「くっそ結局はこうなるか…君たちはあのお兄さんに付いてって」

「「「はいっ」」」

「みんなこっち」


雅人が子供達を誘導していった。いなくなったのを確認した俺は木刀と言えるか怪しい物を出し臨戦体制をとった。春渡や愛莉、オリビアも武器を持った。


「ナゼ、コドモタチヲウバッタ?」

「それはこっちのセリフだ!」

「そうよ、あなたが攫っていったじゃない」

「妹を返して!」

「カンケイナイ、コイツラガニハイッテキタノガイケナイノダ。

ジャマダ、ハヤクドケ」

「話しても無駄そうだ」


俺はゴブリンキングに向かって突撃をした。レベルも3まで上がって身体能力も高いはずだった。ゴブリンキングの剣によって俺の攻撃は弾かれてしまった。


「何っ!」

「コンナカ」

「愛莉!火魔法を頼む」

「了解! 炎よ今こそ集い槍となり焼き貫け!ファイヤランス」


愛莉の魔法は、剣を持つ右手を貫いた。


「グギャァァァ!」


ゴブリンキングの右腕は少し焦げ、動きがかなり鈍った。しかし敵は上位種、

なかなか倒れない。俺は動きが鈍った瞬間に切り掛かった。


「よし!」

「危ない!」


オリビアがナイフを持って突っ込んできた。


「何してる!危ないz…」


オリビアはナイフを振り下ろした。そこには細いワイヤーのようなものが張ってあった。


「ありがとうオリビア」

「気にしないで称矢さん」

「ヨクキガツイタナ」

「えぇ、目はいいから!」

「ソレダケカ?」

「それだけで十分だよ、コノヤロー!」


俺は油断しているゴブリンキングの左手を切り落とすことができた。


「グギャァ!コ、コンナヤツニマケナイ!」


最後と悟ったのか切り掛かってきた。俺は木刀で同じく切り掛かった。

お互いの剣が触れ合う、その時!スパッと剣が切れてしまった…ゴヌリンキングの方が。


「ハ?バ、バカナコッチハナンダゾ」

「うるせぇ!とっとと死にやがれ」


俺はゴブリンニングの首目掛けて一閃。金属おも切れる木刀で首を切り落とした。

ゴブリンキング頭を切られ、ドスンと音をたて倒れ、黒い煙が出て霧散していった。黒い霧が晴れるとそこには魔石とバックを落としていた。


「倒したな!」

「そうね…木刀は真剣だってことが証明されたわね」

「木刀って金属切れるんだぁ〜(白目)」

「おい!春渡!しっかりしろおぉぉぉぉぉぉぉ!」

『おねーちゃーん!』


奥から1人の少女が走ってくる、俺らは誰かと思っていると正体に気づいたオリビアもまた走り出していた。


「エミリー!」


2人は抱き合った。2人とも再開して涙を流している。


『おねーちゃん…怖かったよぉ…』

「ごめんね…でも無事で良かった…」


姉妹の再会の光景を俺らは見ていた。


「微笑ましいね」

「そうだな…」

「百合って素晴らしいわね…」


俺と春渡、雅人は愛莉を反射的に振り返って見た。


「何よ?」

「「「…いや、別に何も」」」

「何、あるなら早く言いなさい」

「「おまえ百合趣味だったのか?」」

「俺にはロリコンとか言いやがってお前は百合趣味かよ」

「だってあんな光景を見たら、ねぇ」


今もなおオリビアと妹のエミリーは抱き合っていた。


「「「…それもそうだな」」」

「あー…何か忘れているような………あっ」

「どうした?」

「兵士さん達忘れてた…」

「「「あっ、やっば」」」


俺らは百合を眺めていてすっかり忘れていた。急いで俺らは兵士さんことアルバ達の元へ向かった。息も絶え絶えになりながらも走り、向かうと絶句した。

そこには、一メートルほどの魔石の山ができていて、アルバさん達が仰向けになっている。


「「「「すみません、存在忘れてました」」」」

「存在って…俺ら不憫枠か?」

「まぁ良いか…で、子供は無事か?」

「はい、しかし数人の子供が追加でいました」

「そうか…近隣の村にあとで寄ってみよう。いなくなった子供の親がいるかもしれない」

「わかりました」

「にしても、ゴブリンの数多くないか?じゃないか?」

「確かに…上位個体と言ってもここまで数が多いと、何かがあるとしか考えざるを得ない」

「あ、ゴブリンキングを倒したら、魔石の他にこれが落ちたんですけど…」


そう言って俺は小さいカバンを取り出した。それを見た兵士は


「マジックポーチじゃないか!これで腐るほどある魔石をどうにかできそうだ」

「「「「あ、あははは……」」」」

「か、帰ろっかルーベルクに」


気まずい状況だったので、俺は逃げるようにそう提案したのだった…

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