第36話 帝国の終焉
その後、エイルーン帝国最後の皇帝、ルーデリヒ・エイルーンは処刑されることになった。
処刑方法は絞首刑。
帝都の真ん中にある広場にて、大勢の民衆が見守る中で処刑が執り行われることになる。
処刑を見守る人間の中には皇帝に仕える貴族や兵士だった者達の姿もあるが、彼らは誰もルーデリヒを助けようとはしなかった。
処刑直前、ルーデリヒはブツブツと気が触れたように独り言を口にしていた。
アリーシャが。アイシスが。神に与えられた神器が……ルーデリヒの口からこぼれる言葉の意味が理解できた者は誰もいない。
どこで怪我をしたのだろう……顔面がグシャグシャになったルーデリヒには抵抗する気力もなく、つつがなく処刑が実行された。
ルーデリヒが首に縄を巻きつけて宙吊りにされると、民衆からは歓喜の声が上がった。
神器を与えられ、五百年の栄華を誇ったエイルーン帝国は滅亡した。
滅びゆく国を惜しむ人間、首を括られた皇帝の死を嘆く人間は誰もいなかった。
その後、エイルーン帝国はセイレスト王国に併合されることになる。
ほとんどの貴族はセイレスト王国に服属を誓ったが、一部の貴族は隣接する別の国への参入を求めるものもいた。
セイレスト王国は貴族達の意思を可能な限り尊重した。
帝国滅亡による利益を独占してしまえば、周辺諸国をこぞって敵に回しかねない。
程よくメリットを分配することにより、他国との軋轢を減らすように努めた。
服属した貴族には領地と地位はそのまま保証したが、皇族の直轄地、抵抗した貴族の領地はセイレスト王国の支配下に置かれることになる。
帝都周辺の土地は今回の侵攻の功労者であるカーベル・セイレスト第三王子が領有することとなり、カーベルは『大公』の位を与えられることになった。
帝国の重鎮。ルーデリヒの片腕であるエドモンド・レイベルン公爵はカーベルに協力して、帝国が滞りなく王国に組み込まれるように尽力した。
その功績によって、ルーデリヒの悪政に協力していた罪は恩赦が出されたのだが……エドモンドは親類に家督を譲ると、毒杯を飲んで自害してしまった。
家のため、領地のために実の娘すら見捨てた公爵が最期に何を思っていたか……それは本人を除いて、誰も知らないことである。
さて……こうして、一つの国の命運と共に戦いに終止符が打たれたが、一つの物語の終わりは新たな騒動の始まりとなる。
後日、後処理を終えたカーベルがいる旧・帝都へと、アイシスを含めた『戦乙女の歌』の四人が呼び出された。
やってきた四人……その中でも、帝国制圧の影の立役者であるアイシスへと、カーベルは笑顔で告げた。
「アイシスさん、俺と結婚して大公夫人になってくれないかい?」
「えええええええええええええええええっ!?」
そんなストレート過ぎる告白に『戦乙女の歌』のメンバーはそろって驚き、特にカーベルに好意を抱いていたローナは愕然として悲鳴を上げたのである。
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