第22話 狩りの始まり
翌日から、さっそく魔物狩りを始めた。
『戦乙女の歌』の四人は事前に地図で教えてもらっていたモンスターの巣へと、順番に訪れることにした。
最初に向かったのはローテスブルクのすぐ傍にある森。四人が転移門によって、送られてしまった平原からも近い場所である。
「昨日のリベンジ。もう遅れは取らない……!」
「準備も万端だし、残らず駆逐してやるわよ!」
レーナとローナが力強く宣言する。
二人とも、昨日の偶発的な戦闘ではかなり動揺しており、エベリアとアイシスに守られっぱなしだった。後衛なのだから仕方がないと言えばそうなのだが、汚名返上とばかりに気合いが入っている。
「じゃあ、サクッと殺っちゃおっか」
アイシスはいつもと変わらない様子。
のんびりとしており、少しも気負ったところはなかった。
「それでは、森に入ろうか。くれぐれも背後に回り込ませないように注意してくれ」
エベリアが宣言して、四人は隊列を組んで森に入っていった。
移動中は斥候職であるローナが先頭を歩いており、続いてアタッカーのアイシス、魔法使いのローナが続く。最後尾はエベリアが歩いており、後方からの奇襲を警戒していた。
四人には慣れ親しんだいつもの陣形である。
「気をつけて、この近くにモンスターの巣があるわ。マーキングの痕があるから間違いない」
「よし、戦うぞ」
斥候であるローナの言葉に、エベリアが頷いた。
モンスターの痕跡を追いかけていくと……そこにいたのは、昨日、遭遇したのと同じ怪物。頭部から角を生やした狼が十匹ほどいた。
「先手必勝」
モンスターがこちらに気がつく前に、レーナが動く。
先端が鋭く尖った氷が放たれて、角狼の一匹の胴体を貫いた。
「グルアッ!?」
「撃ち抜くわ!」
ローナも弓矢を放って、敵を攻撃する。
エベリアは動くことなく周囲を警戒。見通しの悪い森の中では、いつの間にか背後を周り込まれることもあるため十分に注意をした。
「ガルウウウウウウウウッ!」
魔法と弓矢によって数を減らしながらも角狼が突っ込んでくる。
襲いかかってきた敵を牙で噛み砕かんとするが、先頭の角狼をアイシスが殴殺した。
「えいっ!」
「よし、このまま駆逐するぞ!」
エベリアが鋭く指示を出し、四人は次々と角狼を討ち取っていく。
戦いは三分とかかることなく終了した。十匹の狼の群れが残らず地面に倒れ伏して冷たい屍をさらす。
「昨日のように突発的な戦闘でさえなければ、こんなものね」
「ん……楽勝」
ローナが満足そうに頷いて、レーナもⅤサインをする。
二人とも昨日は動揺で十分に力を発揮できなかったようだが、無事に面目躍如を果たしたようだった。
「モンスターの死体、どうしよっか? 持って帰る?」
アイシスが頭部をグシャグシャにされて絶命した角狼を持ち上げて、首を傾げる。
「いや……今回はあくまでも駆除が目的だからな。数も多いだろうし、持ち帰る余裕はない。討伐証明として角だけ持って帰ろう」
「うん、わかった」
エベリアの答えを受けて、アイシスが迷うことなく残っていた角をボキリとへし折った。残った亡骸はゴミのように捨てる。
「相変わらず容赦がないな……可愛い顔をして」
「ん? どうかしたの?」
アイシスが不思議そうに首を傾げる。
その子供っぽい顔は虫も殺さないようなものだ。実際には、そのあどけない顔のまま容赦なくモンスターを殺害できるのだが。
「……子供の方が、大人よりも残酷」
「ああ……そういうことはあるかもな」
レーナの言葉にエベリアは納得する。
確かに、子供の方が大人よりも残酷に命を奪えるというのはある。
アイシスが敵を容赦なく殺せる理由も、無邪気で子供っぽいからかもしれない
「それじゃあ、先に進もうか。モンスターはまだまだいるだろう」
角の回収を終えて、四人は森のさらに奥に向かっていった。
――――――――――
ここまで読んでいただきありがとうございます!
よろしければフォロー登録、☆☆☆から評価をお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます