第6話 失敗

 ピピピピッ ピピピピッ


 スマホのアラームがやかましいくらいに鳴いて、覚醒を促す。ほんの数時間しか寝れていない。瞼が重く、体を起こす気にもならない。寝不足の気だるさは想像以上で、理性を完全に封じ込めた。


 一限はサボっていいか。これは仕方のないことだ。寝不足で体調を崩すより、よっぽどマシだ。


 本能の赴くままに、アラームを再度セットして、そっと目を閉じた。


 ▷▶▷


「……やらかしたな」


 携帯の画面は13時10分を示している。完全に寝坊した。おかしいと思い、アラームを確認すると、翌日の設定になっている。


 画面には大学の友人からのメッセージや不在着信が表示されている。そこに一言、「今日は休む」と送り、顔を洗いに行った。


 腹が減った。そういえば昨日の夜から何も食べてないな。自炊は……今日はやる気が起きない。カップラーメンで済ませるか。

 出来上がるのを待つ三分、昨日の記憶が蘇ってくる。人生で一番の失態、だが思い出されるのは嫌な気持ちではない。認めたくはないが、俺は安らぎを感じていた。


 静かな部屋に麺を啜る音が鳴る。これが虚しさ……かもしれないな。あの一時で満たされた。満ちた感覚を知ってしまった。


 いっその事、知らなければ、出会わなければ良かったなんて思う。


「気、引き締めなくちゃな」


 ラーメンの汁を流しながら、いつの間にか呟いていた。


 この緩んだままの自分でいたら、これまで築きあげたものが全て無駄になってしまう。そんなこと、俺が許さない。許せない。


 何をする気も起きず、ベッドに横になり、天井を仰いだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

次の更新予定

毎日 13:00 予定は変更される可能性があります

ハッピー・バッド・エンディング 雪詠 @marimo_pop

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画