第5話 約束
「――――――とまぁ、こんな感じだ」
「うーん、んん?」
一通り話し終えたが、トワは腕を組んで頭を横に45度傾けている。無理もない、俺は別に子供でも分かるように話した訳ではないのだ。とても冷淡に、言葉を組み替えずありのままに話した。
「んー、つまりゆうちゃんは疲れちゃったってこと?」
「あ、ああ……まぁ、そうだ」
割と核心をついた要約に思わず狼狽えてしまった。子供ならではというか、だからこそというか。
「お話して元気なった?」
「まぁ、そうだな」
俺がそう言うと「えへへ」と顔をにやけさせ、少し照れた顔でトワが自分の頭を撫でている。
確かに、さっきまでのモヤモヤが少し和らいだ気がする。ここまで自分をさらけ出したことはなかった。それもこの不思議な少女のお陰だろうか。
「そろそろ帰るか……トワももう帰れ、そこまで付いて行ってやるから」
思わず話し込んでしまい、時刻はもう1時を回っている。
「えぇー、まだゆうちゃんと話してたいよー」
「駄目だ。そもそも子供はもう寝る時間だろ。親御さんは何してんだ?」
そういえばさっきははぐらかされてしまった。この時間に子どもを外に出すなんて虐待でもしてるんじゃないか? なんて想像が生まれる。
「おかーさんはおしごと。たぶんもう家にいないと思う」
「え、さっきあそこにいるって……」
「えへへ、嘘ついちゃった」
「お、お前なぁ……」
だとするともっと危ない。これまでもこうしてきたのだろうか。
「じゃあお父さんはどうした?」
お母さんがこの時間に仕事に出ている。そんか話から大方予想はついているが、
「おとーさんはね、いないんだ」
「そう……か……」
少し余計だったな。だとすればどうしたものか。
「ねー、明日も会える?」
「明日?」
「うん! もっとゆうちゃんと話したいから!」
考える。トワをこんな時間に外に連れ出すのはさすがにまずい。かといって昼間は俺が無理だし、夕方でも俺がここに来るまで1人でいるのは危険だ。
「……いや、駄目だ。トワが1人だと危ないだろ」
「えぇ〜……じゃあ、ゆうちゃんが迎えに来てよ!」
「俺が?」
「ゆうちゃんが来るまでお家にいるから! それならへーきでしょ!?」
「うーん……」
見方によっては誘拐に見えなくもない。まぁ、トワが説明してくれたら大丈夫だろうか。
「はぁ……分かった。明日はバイトも無いし別にいいよ。だから、俺が迎えに行くまで家にいるんだぞ? 一人で公園にいたらダメだからな」
「うん! 分かった!」
こうして満面の笑みで喜んでくれるとこちらも嬉しくなる。トワを家まで送り、俺自身も自宅へ帰った。
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