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車は青梅街道を進む。中野坂上の交差点で右折。そこから山手通りを北へ進む。電話の着信音にすぐに気付けるよう、カーステレオは切ってある。
東中野駅前を通過。そのまま北へ向かう。全然関係ないが、線路沿いに中野に向かう道は桜山通りという。しばらく行くと高架橋があるが、ここは鉄道マニアには名所として知られている。桜の時期には、桜と電車が一枚の写真にうまく収まるのだという。
山手通りはラーメン屋の激戦区として知られている。目黒あたりが有名だが、実は東中野周辺もなかなかに激戦区だ。さっきからラーメン屋をいくつも目にする。おれのおすすめは、西口出てすぐにある、トムヤンクン・ベースのつけ麺を出している店。一度調べてみるといい。それこそケータイでね。
上落合二丁目まで来たあたりで右折。早稲田通りへ。古いアパートとデカい高層マンションが混ざり合った光景が見えてくる。
二十一時半。上落合一丁目まで来たところで強引に右折。区検通りを南下する。
しばらく進み、昔ながらの酒屋を過ぎたあたりで電話が鳴る。当然、着メロなんかは鳴らない。単調な電子音だけが車内に響く。電話に出る。片手運転、なんのそのだ。
「ナオちゃん、なんかあった?」
向こうはなんか咳き込んでいる。なかなか喋れないでいる。
車は、蔦がやたら絡んでいるマンションの前を通過。
おれはヒラタナオの返事を待つ。
ヒラタナオは息を整えているようだ。
パチンコ屋の前で、おれは一旦車を停める。
総武線の線路が見える。東中野駅の東口まで来てしまった。
「捕まえちゃったんだけど」
ヒラタナオは、ぜいぜい言い出した。
「どういうこと?」
電話の向こうで、なんか揉めている声がする。
「捕まえたよ!」
怒鳴られてしまった。
とりあえず、ここはミヤケナナの家まで向かうべきだろう。
強引にUターンをきめた。赤いアルシオーネはぐずっている。
区検通りを引き返す。
三越のマンションが見えてくる辺りで左折して裏路地に入る。富裕層向けマンションの裏側。昼でもロクに陽が当たらないだろう場所には、ヴィンテージものの家が立ち並ぶ。その中のひとつにミヤケナナは住んでいると言っていた。
少し進んだところにある公園に、ヒラタナオたちがいた。
すべり台のすぐ隣。男が正座させられている。
おいおい。解決には早すぎないか?
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