第2話 魔性の女

 チュン、チュン、チュン、チュン。モーニングコールで小鳥が鳴いてるぜ。小鳥ちゃん達もつい昨日立った、俺のリア充フラグを応援しているのかい?それとも嘲笑っているのかい?

 うん、俺のフィーリング的に小鳥のさえずりは高い声で聞こえる為、さては俺を応援しているな、いや応援の域を通り越して俺に好意があるな。だが残念、小鳥ちゃんたちの思いに応える事は出来ない。何故なら今日俺はリア充になるからな。小鳥ちゃんたちを置いて先にいく。

「うおおおおぉぉぉぉ」

 急に大声で叫ぶ。叫びたくなったから、叫んでみた、それだけだ。朝からテンション高いぜ今日は。

「さあて、体操着、体操着と」

 放課後に女子と二人でプール掃除(リア充フラグ)が控えている為、カバンの中に体操着を詰める。

「白波の体操着姿……ゴクリ」

「いかん、いかん」

 如何わしい妄想を脳内ギリギリで留める。でも白波の体操着姿は見なくても分かる。名前通りの肌の白さとその眩しさ。体操着と彼女はどちらが白いのかはもはや誰にも分かるまい。しかも今日は晴天、太陽が強く照り付ける。プールの水と日光の眩しさが彼女の肌を一層輝かせるだろう。うん、キモすぎ俺。まあでもこれだけ朝から元気に気持ち悪い妄想が出来ていれば、今日のリア充フラグもきっといい方向に進むだろう。そう信じて大きな声で行ってきますを我が母上に告げて学校へ向かった。


「おはよう、桐原君」

「お、おっす」

「今日の放課後は楽しみだね、色々と」

「そ、そうだね、が、頑張ろう」

「どうしたの、そんなガチガチで?」

「いやぁ、あんまり寝付けなかったんだよね……」

「そうなんだ、大丈夫?」

「だ、大丈夫! 大丈夫! なんてことないから」

「もしかして、夏の思い出作りに興奮しすぎた感じかな~?」

「そ、そういうわけじゃ……」

「ま、とにかく放課後はよろしくね!」

「お、おっす」

 ダサい、我ながらものすごくダサい。そして白波様大正解ご名答でございます。いや違うんだ、一つだけ言い訳をさせて欲しい。実物の破壊力は思いの外凄まじい。なんか気のせいかもしれないけど昨日より可愛くなってるし、女ってこういうところあるよな、昨日と同じ人なんだけど意識し出すとそう見えるやつ、魔性の女め。

 とりあえず白波と二人っきりの放課後のプール掃除、この機を逃すわけにはいかない。これを逃したら仲良くなれる機会なんてそうそう来るものではない。午前と午後の授業なんてフルシカトして、どう接したり、何を話したりすればいいかを考える事に授業という無駄な時間を最大限活用しよう。今日はそういう日だ。やれるぞ俺なら。


 ふと頭によぎる妄想での白波の体操着姿、なんかこう……いいよな。俺の鼻の下はとろけるチーズくらい伸びているだろう。

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学校サボっていたらプール掃除を課せられて、成り行きでリア充フラグが立っていた。 T村 @poison116

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