学校サボっていたらプール掃除を課せられて、成り行きでリア充フラグが立っていた。

T村

第1話 リア充フラグは突然に

「先生、いくら何でもそれは無いっしょ」

「何言ってんだお前、先週は2回、昨日も学校サボったろ」

「くっ、それを言われると」

「本当はお前1人に全て任せても良かったんだが、誰もやりたがらないから白波しらなみが協力してくれることになったので、明日の放課後2人でよろしく」

「わーったよ先生」

 昨日サボって今日学校来てみたらこれかぁ。俺は桐原大吾きりはらだいご中学2年。帰宅部である。性格はどっちかって言うと明るい方で彼女はいない。どうやら学校をサボる等の日々の非行が積み重なり、もうすぐ夏休みに入ろうってタイミングで面倒くさいプール掃除を先生から押し付けられちまった。

「桐原君、よろしくね」

 そう優しく俺の席の隣の女子がふわりとした口調で言ってくる。彼女こそが白波。白波葵しらなみあおいだ。この学校に通うものなら知らないものはいない、学年一の美少女だ。頭も良くて、運動神経も抜群に良く、おまけにスタイルも抜群という本当に中学生かと疑いたくなるハイスペックの持ち主だ。因みに俺はそんなに彼女と話したこと無いから、これぐらいしか情報は知らないが、ウチのクラスの野郎共だけでなく他クラスからも人気を集めており日々彼氏がいるのかいないのかを奴等は探っているらしい。興味ないね、俺は。

「そういえばさ、桐原君て何で学校ちょくちょくサボるの?」

「んー特に理由ないかも、学校来ても暇なんだよね」

「そっかー、なら良かったね、今回はやることが出来て」

「え、それはどういう?」

「私とプール掃除一緒にできるんだよ? 夏の思い出が作れそうじゃん!」

 一瞬思考が停止した。白波は俺に気があるのか?仮に無いとしてもそんな言い方年頃の男子に言うにはマズいだろうよ。そういう気が無くてもこっちが変に意識しちゃうんじゃんか。いかんいかん、何か返答をしなければ。

「んー、な、なるほど?」

 即座にポンコツ過ぎる返答が口から出た。普段並大抵のことでは動じないのにめちゃくちゃテンパっていて、顔が熱くなっている事は直接触らなくても分かった。

「ははは冗談だよ冗談だよ、少しからかってみただけ」

 どうやら白波には全て見透かされていたらしい。我ながらこれは恥ずかしい。

「勘弁してくれよ、白波」

「ごめんごめんて、因みに桐原君てさ、今気になってる人とかいるの?」

「は、はい?」

 えーたった今、本日2回目のポンコツ解答を桐原選手マークいたしました。マジで何考えてんだこの女。俺に気があるのか? そうなのか? でもどう考えてもそうとしか思えないよねこの展開。良いか、落ち着くんだ、漢キリハラ。これは彼女の純粋な疑問によるものであり、それ以上でもそれ以下でもないんだ。質問の意図を探ったところで何も出て来やしないんだ。大体俺は白波とそこまで話したことも無い故に、全然親しくないんだ。だから彼女を異性として見ることなんて、何か特別な事が起きでもしない限りあるわけないんだ。よーしたくさん自分に言い聞かせて少しは落ち着いたぜ。一旦冷静になって彼女を見てみろ。唯のクラスメイトに決まってる。見てやがれ白波、今その面拝んでやるからな。散々自分に言い聞かせゆっくりと彼女の顔の方を見る。そして目と目が合う。

「ん、何?」

 白波は私の顔に何か付いてる? とでも言いたげな無邪気な顔で俺を見ていた。信じられないくらい白波は可愛くて、再び思考が停止した。

「います」

 我完全敗北なり。圧倒的敗北である。

「えぇー!  誰、このクラス?」

「い、いやそれは」

「教えてよ! 桐原君」

 白波はものすごく高いテンションで俺に押し迫ってきた。それが何だか嬉しくて幸せだった。

「じゃあ、明日のプール掃除の時に言、言うよ」

「分かった! うわぁー楽しみ、期待しとく!」


 こうしてプール掃除なんていう唯の面倒くさい雑務が一瞬にして夏の思い出(リア充フラグ)に変わろうとしていた。

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