第7話

 今日の放課後は実はある予定がある。最近俺は一人カラオケにハマっているのだ。

 いわゆるヒトカラというやつである。


 なぜやるかと聞かれれば、普通にストレス発散になるからだ。やはり陰キャの俺にとっては陽キャの麻乃と付き合っていたのは楽しくもあり、そして重圧もあった。


 カラオケ自体にハマった原因は麻乃とのデートがきっかけ。あの時は楽しかったな…、というのは忘れるとしてさっそく一人、カラオケに向かおうと校門を出ようとしたら、校門の前に麻乃の妹である文芽がいた。


 こちらを見てにやにやと笑みを浮かべている。絶対待ってたな、と呆れつつ俺は知らないふりをしながら校門を去ろうとする。


「ちょっと、侑都さん気づいてるのに無視しないでください」


「…」


 出来ればスルーしたい。今からヒトカラなんだよ。


「先輩、無視しないでくださいって~」


 そういって俺の腕に腕を絡める文芽。何を違和感なくしているんだ。こういうのは付き合っている男女が行うことだ。


 今日の昼休みが終わって五時間目の後だったか。すぐに文芽の話が学年中に広まっていた。文芽が辰巳麻乃の妹で、今までずっと変装していたことがあっという間にクラスの壁を越えて流れてきていた。


 あの時は本当に馬鹿かと思った。どれだけ人気なんだよって。別に誰が学年のマドンナと呼ばれようとどうでもいいけどいくらなんでも拡散するのが早すぎる。


 これが高校生ってやつだな。これも青春の一ページということだな。


 そういえば麻乃も驚いてたな。たまたま視界に入った時にものすごい顔をしていた。それだけ妹のことが気になるのかは不明だが。


「放してくれ。用事があるんだよ」


「じゃあ私も着いていきます。どこへでも」


「いや、冗談だろ。どこへでもって」


「冗談だと思うんですか…?私のことはそんなに信用できませんか?」


「そういうわけじゃ…」


 くっ、女の子にそんな言い方されて否定できるわけないじゃないか。それに元カノの同じ顔と声をしている。

 たちが悪すぎる。


「もしかして女の子とデートの予定とかあるんですか?」


 急に声のトーンが下がる。なんだ、一瞬悪寒が。


「違うよ」


肯定したら危険な匂いがしたので否定しておく。


「じゃあ問題ないですよね。行きましょう先輩。エイエイオー!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

彼女に双子がいたのを知らなかった俺が彼女に散々に振られる話 ミナトノソラ @kaerubo3452

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ