第6話
つまりこういうことらしい。
普段は麻乃の双子の妹として目立ちたくなかったから変装をしていた。おかげでまったく周りから注目されずに平和な日々を送れていたらしい。
入学する前からもともと目立つのが嫌で、そのままずっと変装したまま。
初期の頃、麻乃が入学してからすぐに人気になったものだから苗字が一緒だった彼女も色々と疑われたらしい。
でもなんとか疑いを晴らし、今日この日まで過ごしてきたのか。
うん、なんて言えばいいのか分からないけど頑張ったんだな。俺にも妹がいるが、たぶん俺が妹の兄だと言ったところで誰も信じないだろう。
だって桜、俺よりも何億倍も気が利くし、頭いいし、運動神経抜群だし、なんだって顔がいい。
同じ両親から生まれたとは思えないくらい顔面偏差値がかけ離れている。
実際モテたことないし。麻乃と付き合っていたのももしかしたら最初から演技だったのかもしれない。
別れるときにあれだけ罵詈雑言が出てくるって絶対元から嫌いだったんだろ。うん、それに違いない。
もしそうじゃなかったら一生のトラウマになるだろう。女性と付き合うこと自体に恐怖を覚えて未来しか見えない。
そんな未来はごめんだね。
「侑都さんの弁当、美味しそうですね。お義母さまが作ってくれたんですか?」
「いや、違う」
ん、今なんか違う意味が含まれていた気がする。
今日も桜作の弁当は絶品だ。俺の好みな塩加減の卵焼きにアスパラガスのベーコン巻、新鮮な色をしたサラダ。しっかり健康バランスを考えられている。
そういえば桜が弁当を作り始めた時から一切病気になった記憶がない。あいつは良いお嫁さんになるな。
あと50年はしてほしくないけど。
「じゃあ妹さんですか?」
「ああ、よくわかったな。すごいだろ、俺の妹は」
「はい、すごく美味しそうです。確かお名前は桜さんでしたっけ?」
「そうだけど、なんで知ってるんだ?」
桜は一年生、彼女が知っているわけが…いや、思い当たる節が…
「侑都さんの妹、武田桜さんは学年問わず有名ですよ。お姉ちゃんと同じ理由で」
やっぱりそうか…うん、桜なら当たり前か。麻乃と付き合っていたからだろうな、桜のことが噂になっているのを知らなかったかのは。
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