第4話
俺は無視を決め込むことにした。
意味が分からない。昨日散々に罵倒しつつ振ってくれたではないか。それで朝から家を訪ねてくる時点でおかしいのに、なんで学校でも話しかけてくる?
まさか昨日のことを覚えていない、というわけじゃあるまいな。あれだけ性格がひん曲がっていたことが判明した昨日、クラスメイト達からも少し距離を置かれていたように思う。
それなのに一日でこの変わりよう。クラスメイト達もいろいろおかしいな。やっぱり陰キャの俺よりも人気者な麻乃の味方をするのか。
まあ学校生活を安全に過ごすためなら陰キャよりも陽キャ側に着く方がいいよな。俺もそうするだろうけど…いざ敵側に立たされると腹立たしいな。
「ねぇ、なんで無視するの?私何かした?…それになんでラインもブロックしてたの?意味わかんないんだけど」
「…」
小さくため息をつく。正気かよ。記憶でも失ってんのか。早く先生来てくれないだろうか。
この空気が地獄すぎてたまったもんじゃない。今すぐにでもこの場から消えてしまいたい。桜に会いたい。
癒されたい。
昼休みになってすぐ麻乃が話しかけてきそうだったので慌てて屋上へと逃げた。もちろん桜が作ってくれた弁当箱は持ってきている。
いつもは教室で一人ユーチューブを堪能しながら黙々と食べていたんだけど…これからは出来そうにないな。
嬉しいことにこの学校の屋上の扉の鍵は壊れている。そのことを誰も知らないことも知っている。
つまり穴場。わが校の最高の穴場なのである。
麻乃にもバレていないはずだ。教室を出るときに着いてきている感じがあったがどうにか巻いたようだし。
屋上でも学校のWi-Fiは繋がってるし、機械的な風ではなく自然の美味しい空気を味わいながら妹作のこの世で一番おいしいお弁当をいただくとしましょう…と思っていたのに…
「こんにちは侑都さん」
屋上の扉がゆっくり、キィ~、と耳障りな音を立てながら開かれていく。聞き覚えがあると同時に口調に違和感を覚える。
麻乃が来たのか…?それにしては口調が…なんだ、誰だ?声は一緒?
「お初にお目にかかりますね、侑都さん」
入ってきたのは麻乃?だった…が、雰囲気が違う。麻乃だけど麻乃じゃない?麻乃の姿をした誰か?
いや、そんなわけはない。アニメの世界じゃあるまいし、そもそも似てる人がいたら噂にならないわけがない。
「…」
「ふふ、なにか混乱しているようですね侑都さんっ」
目の前に立つ少女が何か企んでいるような瞳をして笑顔を浮かべている。間違いない、麻乃ではないことを確信した。
「誰だ?」
「はい、自己紹介しますね。私は二年二組の
「辰巳…?」
「はい!辰巳麻乃の双子の妹です!」
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