第2話
その日、俺は授業の内容が頭に入ってくることはなかった。理由は明確で、突然彼女に振られてしまったからである。
一日中ずっと考えていた。なんで振られてしまったのだろうかと。彼女を傷つけるような真似をした覚えはない。
でも振られたということは自分が知らぬ間に彼女が傷つくようなことをしたということだろう。
…でもあそこまでひどく言わなくてもいいじゃないか。たとえ彼氏のことが嫌いになったからとはいえ過剰に相手を口撃しなくてもいいだろ。
原因を言ってくれていたら誠意を込めて謝った。
なぜかって?
麻乃のことが大好きだったからだ。
でもあの時の彼女の態度を見て少し気持ちが変わった。直後はショックが大きく倒れてしまいそうな勢いだったが、考えているうちに思考が変わった。
「はぁ…桜になんて話せばいいんだよ…」
桜とは俺の妹のことだ。今年この高校に入学した高校一年生で初めて彼女を家に招いたときから麻乃と仲良くなっていた。
もしかしたら俺よりも仲良かったかもしれない。
「気まずい…」
桜は本当に麻乃のことが大好きだ。いつも家に帰ると年甲斐もなく、「麻乃先輩はいつくるの、いつくるの?」と聞いてくるくらいに。
もう別れたことについて何か考えるのは止めよう。無駄だし、虚しくなるだけだ。
家に帰るとやっぱり桜が麻乃のことについて聞いてきた。もちろん、可愛い妹の純粋な笑顔に最初は真実を伝えることを躊躇した。
でも今逃げたところで意味ないな、と判断した俺は出来るだけ明るい感じで別れたことを伝えた。
「え、嘘でしょ…?」
「いや、ほんと」
「いやいやいやいや、あんなに兄さんのこと大好きだったのに」
「残念ながらめっちゃ嫌われたらしいよ」
「何があったの?」
深刻そうな顔で俺の顔を覗き込む桜。心配している顔も可愛い桜。うん、やっぱり家族は裏切らない。桜イズ正義。
「いや、これは言わないでおく」
罵詈雑言を吐かれたなんて言ったら桜を悲しませてしまう可能性がある。夢は壊さない方がいい…けど、これから桜には麻乃と関わってほしくない。
兄が妹の人間関係に口を出すのはいかがなものかと思うが、あんな闇を抱えている女に大切な妹が汚されてはいけない。
今すぐにでも関係を断つべきだ。
「でも…もうラインはブロックしておいた方がいい」
「ブロックって…兄さん、もしかして悪口言われたの?」
今ので察せられたのか。なんて勘が鋭い妹なんだ。
「……」
なにか考える仕草をする桜。みるみる真剣な表情になっていく。きっと色々と想像しているのだろう。
多分七割くらい合ってるんじゃなかろうか。
「分かった…。兄さんを傷つけるような人ならもう関わらない」
「…ありがとう」
ふとピロンとスマホの通知音が鳴った。同時にポケットの中で振動が始まる。
電話か?俺に電話する奴なんて麻乃くらいしかいない…
スマホを確認すると案の定、麻乃だった。
なんでこいつ今更電話かけてきてるんだ?意味が分からない。
とりあえずブロ削しておいた。
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