会津藩御預
「これからどうしますか?」
残る、と宣言した十五人が八木邸の一部屋に集まっている。
最初に口を開いたのは沖田さんだった。
今はただの浪人集団。
八木邸の人達も、いつまでもただ飯は食わせてくれないだろう。
「当てはある。
京都守護職だ」
土方さんが言う。
なんでも、芹沢さんには兄がいて、その兄は公用方、つまり、守護職の仕事全般に対して藩主を補佐したりしている。
その兄を
「妙案だな」
それを聞いた芹沢さんは笑って言った。
聞いていた俺は、これから色々なことが起きるんだな、と思うと緊張してきた。
幕末は大体六年くらい。
そんな短期間で、分厚い小説が何冊もある程の出来事があるのだから、息つく暇もない。
その後、例の芹沢の兄を通して掛け合った。
結果、意外にもすぐに、会津藩御預の『新選組』となった。
「これから頑張らないといけないですね」
同じ部屋にいる出雲さんに少し緊張気味に言う。
「そうだな…。
でもなんか少し嬉しいよな、
そりゃ生き抜くために頑張らないといけねぇけどよ。
新選組の初期メンバーの中に俺とフユがいるってのが俺は嬉しいな」
出雲さんは嬉しげな表情をみせて言った。
その気持ちは俺も同じなので出雲さんに頷いてみせた。
新選組となって数日経った頃、来客があった。
その時俺は沖田さんと一緒にいた。
「たのもう‼︎」
玄関先で声がした。
「誰ですかね」
俺の言葉に沖田さんは首を傾げる。
誰かが応対する音も聞こえないので
「少しお待ちを」
そう大きめの声で言い、玄関先へと早歩きで向かう。
沖田さんも俺の後ろについてきた。
そこにいたのは若い男だった。
その雰囲気は只者ではない、と一瞬で感じた。
「斎藤さんじゃないですか。
お久しぶりです」
この世界の記憶を辿り、この人があの斎藤一だということを思い出す。
確か藤堂さんと同い年だ。
この人が明治まで生き延びて警察になるのか…。
「久しぶりだな、総司、フユ。
…フユ、雰囲気が変わったな」
俺はそう言われてとても焦った。
今まで言われてこなかったのであまり気にしていなかったが、今の俺は史実を知っているのもあってか雰囲気や態度が違うんだろう。
「それ私も思いました。
浪士組として集まった頃からどこか雰囲気が変わったんですよね」
振り返ると沖田さんが頷いていた。
「…俺だってこれから新選組としてしっかりしようと思って頑張ってるんですよ」
そう言って誤魔化すしかなかった。
「そうか。
実は俺もここに入りたいと思うんだ」
斎藤さんの用件は新選組へ入ることだったらしい。
「歓迎します。
じゃあ近藤さんと土方さんのところに行きますか」
「あぁ」
そう言って斎藤さんが俺についてくる。
新選組の、明治時代まで生き残った男、斎藤一が加わった。
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