残った十五人
中山道を通り、無事に京へ着いた。
だが、この先を考えて俺と出雲さんは気が気ではなかった。
八木邸に着いた時は、ここが後の新選組屯所となるのか、とわくわくしていた。
だが今は、この先どうなるかを思い出し、憂鬱になっている。
清河八郎が江戸に戻るとか言うんだよな…。
一応俺達は残るらしいけど、この先大変すぎるだろ。
出雲さんも同じようなことを考えているのか浮かない顔をしていた。
「出雲さんが今考えてること、大体分かった気がします」
「多分俺もフユも同じようなこと考えてんだろ。
はあぁ、気が重い」
「ですね…」
これから何が起こるか大体分かっているので、自分はどうすればいいのか、というハラハラがあった。
そんな風に話していると藤堂さんがやってきた。
「駿ー。あ、フユもいたのか。新徳寺の本堂に集合しろだってよ」
そう言われ、俺と出雲さんは、はあ、とため息をつく。
そして皆と一緒に八木邸を後にした。
新徳寺に着くと、中には大勢の浪士組隊士がいたが、それでも三分の二程度だった。
その中には芹沢さん一派もいる。
少しして清河が出てくる。
そして、想定していたこと(周りの人にとっては想定外のことだったと思うが)を清河が言い出した。
将軍家家茂の守護とは募集の時の名目で、真の目的とは尊王攘夷の旗頭でいようとするものである、と。
そして既に建白書を朝廷に奉っている、というのだ。
周囲からはどよめきが生まれた。
あぁ、始まった。
出雲さんを見るとはあ、とため息をついていた。
「関白からのお達しによれば、生麦事件が未だに解決しておらず、いつ英国との戦端が開かれるかも知れない。我々は江戸に帰り、その備えに当たる」
清河はそのように続け、ニヤリと笑った。
この期に及んで自分の計画に逆らうものなどいないとでも思ったのだろうか。
俺と出雲さんも、ニヤッと笑う。
何故なら、清河の想定外の人物が現れるからだ。
「我々は京に残ります‼︎」
立ち上がって声を上げたのは近藤さんだ。
その声を聞いて土方さん、沖田さんら、そして俺と出雲さんも立ち上がった。
周囲からはざわめきが起こる。
「貴方達がここに残っても、身分の保証など一切ない。
それでも良いのだな?」
清河はそう近藤さんに尋ねたが、近藤さんは
「それでも良い」
とすぐに言った。
すると、もう1人、立ち上がった人がいた。
「なら、俺も残る」
先程まで退屈そうに聞いていた芹沢さんだった。
最終的に、浪士組は江戸へと出発し、京には十五人が残った。
このうち十三人は最初の新選組の顔ぶれだ。
俺は本当にここにいていいんだろうか。
史実では十三人となっていた顔ぶれに俺と出雲さんが入っていることに複雑な感情を抱いた。
だが、これからを生き抜かなければならない、と同時に強く思った。
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