上洛、その道中で
二月八日早朝、史実通り浪士組は京へと出発した。
中山道を通って京に行くという。
浪士組は、未来の埼玉県に位置するところの、本庄宿と呼ばれる宿場町で、1日目の夜を過ごすことになった。
六番組の人達は店で酒を酌み交わしている。
だが、俺も出雲さんも、未来ではまだ酒が飲めないので、居心地悪く感じ、外に出てきていた。
「とりあえず、何事もなく京都に行けるといいんだけどな」
出雲さんが空を見上げながら言う。
空には月が浮かんでいる。
「そうなればいいんですけど…、多分何かありますよね…」
確か史実では、宿が取れていないことがあって芹沢さんが…。
俺は苦笑いして言った。
そうしていると近藤さんと芹沢さんが来た。
役職持ちの人同士の会に出ていたが、抜けて此方に来たという。
「お前達は酒は飲まないのか」
店に入ろうとしていた芹沢さんがふと気づいたように話しかけてきた。
「あ、えと…」
この時代、元服が確か15〜17歳。
元服の年齢なので一応酒も飲めるということになる。
だが、俺と出雲さんは飲めない。
などと考え、どう答えようか困っていると
「フユと駿は酒が飲めないんですよ。苦手なんでしょう」
近藤さんがにこにこしながらそう言ってくれた。
この世界で俺達はそういうことになっているのか、と思いつつ頷く。
「なんだ、そうなのか」
芹沢さんは拍子抜けしたように言い、そのまま近藤さんと一緒に店に入っていった。
しばらく出雲さんと周りをうろうろしたり、史実について話したりしていたが、することが無くなり、
「どうするよ、フユ。俺達だけでどっか行くか?」
「そうですね…」
などと出雲さんと俺で話していると沖田さんが出てきた。
「2人とも、まだ食事をしていないでしょう?私もあまり酒を飲まないので一緒にどこか行きましょう」
沖田さんはにこにこしてそう言い、俺達を他の店へと連れて行ってくれた。
沖田さんは、本などに書いてあったように優しい人だった。
色々な話をする人なので、退屈しなくてすんだ。
江戸を出発してからしばらく経った頃、ようやく旅の半分程となる下諏訪宿に着いた。
近藤さんなどの宿割役は先に此方に来て宿を確保していたそうで、着いた隊士達を組ごとに宿に案内している。
六番組の宿を伝えられ、その宿に行く。
「フユ、しっかり寝てるか?」
向かっている途中で永倉さんに聞かれた。
実を言うと畳の上に雑魚寝、というのにあまり慣れておらず、あまりよく眠れていなかったのだ。
だけどこの時代はこれが普通だから、慣れるしかない…。
「大丈夫ですよ。少し疲れましたけど眠れてます」
永倉さんにそう答えると、
「そうか?ならいいんだが」
と永倉さんはまた前を向いた。
宿に着き、昨日と同じように宿の外の店で食事を済ませようとしたら土方さん達に肩を掴まれた。
「フユも駿も、今日は付き合えよ。
酒が飲めないからって抜けてるんじゃねぇ」
ニヤリと笑った土方さんがそう言う。
断れない、そう思い渋々居酒屋へと着いていった。
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