小石川伝通院にて
この世界での記憶を辿ったところ、俺と出雲さんは試衛館の門弟で、昔からそこで稽古をしていたらしい。
また、ここは小石川伝通院で、浪士組として京に行くために此処に集まっているという。
こそこそと出雲さんと情報整理を行っていると
「あれ、
と永倉さん達が言っているのが聞こえた。
聞き覚えのある名前に顔を上げると、何人かのいかつい雰囲気の男達がいる。
その中心には鉄扇を持ったがたいのいい男がいた。
芹沢っていうと…、新選組初代局長の…。
俺は永倉さん達の話を聞き、出雲さんの方を見て
「出雲さん…」
「だよな、芹沢ってあの…」
などとこそこそと話していた。
すると芹沢と呼ばれた男とその周りの男達は此方に近づいてきたので、咄嗟に出雲さんと俺は立ち上がった。
ここでなにもせずに無視するのは駄目だ。
「試衛館の、出雲駿と申します。
宜しくお願い致します」
と出雲さんが最初に挨拶し、そこから流れで沖田さん、土方さん、と順番に挨拶していき、俺の番になる。
「同じく試衛館、
挨拶をすませると、目の前にいた集まりの中の1人が最初に口を開いた。
「
「
「
「…
4人の男が名乗る。
そして、先程芹沢と呼ばれていた男が名乗る。
「神道無念流の、芹沢鴨だ。宜しく頼むな。…お前達が同じ組のやつらか」
芹沢さんは、大柄で、鉄扇を持っており、圧倒的な威圧感と存在感を俺は感じた。
「組…ですか?」
沖田さんが首を傾げながら尋ねた。
「浪士組は一から六の組に別れるという。
お前達は芹沢さんが率いる六番組だ」
新見さんがそう説明する。
俺はそれを聞いて、試衛館の人達は皆平隊士だということを思い出した。
そして近藤さんは宿割の役目がある、ということも思い出した。
辺りを見回すといつのまにか近藤さんは宿割の為の集まりに行っていた。
しばらくすると近藤さんが帰ってきて、芹沢さん達と挨拶を交わしていた。
俺は出雲さんの方に行き、話しかけた。
「史実ではあと何日かしたら京都へ出発するはずですよね」
小さい声でそう言うと出雲さんは頷きながら答える。
「そうだ」
そんな風に話していると、御堂の前に召集された。
そして、発起人である
この後清河は俺達に攘夷の先駆けになるのだ、とか言うんだよな。
そんなことを考えながらぼんやりと演説を聞いていた。
それは出雲さんも同じようだった。
演説が終わり、二月八日に江戸を出発することが決まった。
「ようやくだな。俺達ももうすぐ武士になれるんだ」
土方さんや近藤さんなどは嬉しそうに話していたが、俺と出雲さんはそうではなかった。
明日の命すらあるかわからないこの時代で、ここよりずっと平和な未来で、生きててきた俺達が幕末生きていける気がしない。
「出雲さん…絶対生き抜きましょう、この時代を」
この時代に来たからには、生き抜かなければならない、そう思い、出雲さんをじっと見て言った。
「…そうだな。
……一緒なら、生き抜けるはずさ」
出雲さんはいつものようにニヤッと笑い、俺を安心させるようにして、言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます