第10話 My Big Mouth -3-

ただ、今回の件はすこし話が違う。

僕がいつもやっている運用設計の作業をそのままトレースできるアプリがあれば、「近藤の一部を量産する」ことは可能である。

僕の一部がアプリになるのでコピーが簡単になるからだ。


「それなら、運用設計を終わらせられるかもしれん。」

僕はポツリとつぶやいた。

経営計画書を作りながら思ったのだが、僕は運用設計を広めたいのではなく、運用設計を終わらせたいのだ。

運用設計のような人間を扱う泥臭い業務は誰もやりたがらない。

もっと技術的に花形の業務に惹かれるのもわかる。

なので、運用設計を広めるよりも、概念自体を終わらせて次のフェーズに進むべきなのである。

僕個人の興味としても、自分の知識や経験でお金を儲けるというより、ナレッジを高速で広めてそれを共通認識にして社会全体を変えることに興味がある。


「業務効率化ツールとコンサルをセット販売するという形が一番手堅いと思います。そこで研修もセットで教育をやりながらツール利用者を増やしていくという感じです」

キムは具体的な話をつづけた。

「誠司さんのビジネスターゲットって、業種だとどのあたりでしたっけ?」

「情報サービス業になるんじゃないかな」

「情報サービス業はだいたい91,000社あるので、その中の1割にリーチできて、さらにその1割、つまり全体の1%に需要があるとして910社です。5年後までに200社と契約するとして、1社500,000円の月額をもらうとしたら、年商12億です」

「12億!?」

キムは立て板に水が流れるように説明したので、細かくは把握できなかったが最後の12億という言葉だけは理解できた。

頭の中では、「12億あったら、何しようかなー」という、宝くじが当たったらみたいなアホな想像が浮かんだ。

「書籍の販売実績とか、ここまでの感じを見ると可能性はあると思いますよ」

キムは一息おいてから話をつづけた。

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