第9話 My Big Mouth -2-

なんとなく、昔の上司に言われた「近藤を量産しろ」という言葉を思い出していた。

会社は成果をあげる社員が発生すると、そのコピーを作ろうとする。

「コピーを作れ!」は云うは簡単だが、行うは激ムズである。


コンピュータであれば、コピーを作るのは簡単だ。

データはコピペでペっとやればまったく同じものがすぐに複製できる。

アプリをインストールすれば、違うパソコンでも同じアプリを使うことができる。

ただ、この考え方を人間に適用するとエラいことになる。


当たり前だが、人間は性別、体格、性格、思想などが違う。

このどれか一つでも揃えようと思うと、手術か洗脳、もしくは教育が必要である。

これはパソコンでいうところのOSがバラバラで設定値もそろっていないということなので、ソフトウェアをインストールしようとしても上手くいかないのだ。

つまり他人の考え方をインプットするというのは、誰でも簡単に出来るものではない。

普通に考えれば、そりゃそうである。

それでもこの「量産せよ」の指令がなくならないのは、たまたまOSが似ている部下がいて方法論の継承が成功するという事例のせいである。

成功者は、自分の体験を一般化して吹聴する。

これを聞いた世のマネージャーは思考を停止させて「コピーを作れ」というのである。

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