第7話 未来は俺らの手の中 -3-

書籍を書くのは2冊目なので、サクッと書けるかと思ったが、結局また1年半かかった。

経験など関係ない。

僕が書籍を書き上げるには、どんな状態でも1年半かかるのだ。

ようやく「運用改善の教科書」を書きあげたころに、いろいろなところからセミナーや研修の依頼が入り始めた。

まだ2冊目は発売していない。

1冊目の「運用設計の教科書」が発売から1年半たってようやく反響が出始めたのである。

とにかく、なんでもかんでも1年半かかる。

これはコンテンツビジネスやサービス販売でもよくあることらしく、発売タイミングと顧客の認知行動タイミングはズレる。

僕としては2冊目の「運用改善」ことでいっぱいになっているのに、世間的には「運用設計」としての需要が増え始めたのである。


来た依頼はいったん全部受けて、急いでオンラインでの研修やセミナーのやり方を練り上げた。

これがビジネスの新しい柱になっていった。

それに伴い、取引先も増えてた。

企業コンサル案件も増え、単価の交渉もさせてもらった。

コロナ禍の厳しい時期だったが、個人事業主時代の2020年から2022年までの3年は右肩上がりで年商は増えていった。


ただ、そうなるとひとつの問題を抱え始める。

大きな企業は個人事業主との契約を行っていない場合が多く、僕と契約するためにいろいろな部署が「前例のない作業」を強いられることになる。

多くの場合は、その会社のトップからの一声を頂いて契約することになるのだが、それはそれで心苦しいものがある。


あと、個人事業主は社会的信用がほぼない。

これを残りの人生続けていくのか? という気持ちにもなる。

コンサルや研修を続けて、単価を上げていって収入を上げるという労働集約型のビジネススタイルに限界も感じる。

かといって、ようやく手に入れた裁量を手放してサラリーマンに戻る選択肢は、もうない。


そうなると、もう起業するしかない。

でも、起業ってなによ?


こんな時は、萬くんとキムに相談である。

サラリーマンから個人事業主になったときと同様、この二人への相談が僕の人生を大きく変えることになる。

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