第2話 White Riot -1-
2019年の8月。
「運用設計の教科書」を出版した。
その時、僕は控えめにいって怒り狂っていた。
業務で得た知識を書き記したので、何かあった時に社員を守るため。
ということで、著作権が会社になったのだ。
長い交渉をして、権利は会社だが著者には自分の名前を載せてもらうことを勝ち取った。
勝ち取った、と書くにはあまりに小さすぎる報酬だ。
この小さな報酬のために、僕は疲れ果てていた。
1年半、毎晩のように深夜のファミレスに通って書いた分身のような本である。
この書籍の権利は僕にとっては印税というお金の問題ではなく、尊厳やプライドの問題だった。
この時点ですでに、次の書籍である「運用改善の教科書」の構想があったが会社員のまま次の書籍を書くことは無理であると判断せざるを得なかった。
あまりに騒ぐと出版自体を止められる恐れもあったので、表面上は冷静を保ちつつ「運用設計の教科書」が無事に出版されるのを見届けた。
出版された翌日、僕は部長に退職届を提出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます