too Late to Die
近藤 セイジ
第1話 四十にして惑う
かんたんにいうと、40歳になって人生に絶望していた。
3年前にサラリーマンを辞めて、個人事業主になった。
その後、いろいろと良縁に恵まれて仕事は順調だった。
収入は3年間増え続けているが、限界は見えていた。
僕の本業はコンサルタントなので、1時間当たりの単価で収入がほぼ確定する。
この単価の上限はいくらで、1か月160時間働いたとして最大の収入はこれぐらいという額が3年目にして完全に見えたのだ。
コンサル仕事を求められるだけ続けて、60歳か70歳まで続けてこれぐらい稼ぐ。その貯金で老後も穏やかに暮らす。病気さえしなければ、想定通りに進むだろう。
しかしそれが、果たして僕の人生なのだろうか?
路頭に迷った僕は、とある友人に相談した。
元銀行員で世界を飛び回り、フランスでMBAを取って、戦略コンサルを経てスタートアップ企業をやりつつ、他のスタートアップの支援をしながら500年続く実家の寺の副住職という、経歴が渋滞している中学のサッカー部の後輩である。
副住職に相談を終えると、彼は言った。
「それなら、誠司くんの業務を標準化してアプリケーションにして売り出したらどうでしょう。法人化して販売すれば年商10億ぐらいかんたんに行くと思いますよ」
……、10億?
住職は穏やかな笑みを浮かべながら、とんでもない数字を口にした。
その数字を聞いた時。止まっていた自分の頭の歯車が、ギリギリと重い音を上げて回り始めるのが聞こえる。
アプリケーション……、なんだそれ、ただ標準化はできるな、法人ってなに、人を雇うのか、事務所は、手続きは、今取引している会社は、どうする?
止まっていた時間が一気に動き出した。
新しい可能性に、ワクワクしている自分がいる。
こりゃ、何からどうしたらいいんだ?
ここから始まる話は、人生に迷った40歳の男が新しく何かを始める話である。
それと同時に、個人事業主から新たな会社を立ち上げる話、新しくビジネスを始める話、SaaS開発する話でもある。
そして、最終的には成功する話になるといいな、と現時点では僕が思っている話でもある。
これまでのことを記録しておくことによって、次にチャレンジする誰かの何かの手助けになるかもしれないと思い、ひとまずは現在に追いつくまで連載を始めてみようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます