社会不適合者達の大冒険

良夏

第1話

何処にでもある夕方の住宅街。

人通りも少なく、穏やかな普通の場所には、あまりにも不釣り合いな高くて長い、刑務所のような壁が見える。

その白壁を目指すかのように歩く一人の若い一人の男。

その男は、髪型も服装も小汚く、まだ5月だというのに、顔やシャツには汗の形を浮き上がらせ、警察官が見れば職務質問間違えなしのやつれ顔。 

─あー。無理。マジ無理。金も出さないのに何呼び出してんだよ‼クソが。こっちは超金欠。キングボンビー背負ってんだよ!!金が無いから彼女も作れないし、風俗も行けやしない。あー、惨めだ…生まれてきてごめんなさい。

 そんな事を考えている時に目の前に大きな大きな屋敷。

「何だ?!この家っ呪ってやろうかぁ?うお~〜っ!!」

こんなパーフェクトな不審者が突然壁の中を目掛け何かを投げ捨てた。

「キングボンビー行ってこーい!!」

その何かはキレイなアーチを描き高い壁を越え消えていった。 

そしてその男は、そのまま去っていった。


「おー!なんてこった。誰だよゴミ捨てやがって…て。誰か居ますか!?SOS〜」

主人は屋敷の者に声を掛けた。

「何〜?」

声の方に目をやると着物を着た子供だった。主人はカブリを振るい、言葉を返した。

「よぅ。ガキいたの?」

「うん。何か用事?」

「いや、お前にはなんの用事も無い。そういえば池の方にオッサンがいたぞ!?遊んでもらえ。うん。それが良い。」

「ば〜か」

と言い、子供は去っていった。

「チッ、可愛いガキだぜ」

と悪態をつき、家主はもう一度叫んだ。

「SOS〜ヘルプミー」

「は~い」

次は目当ての相手が答えた。

「おっ。1時間もお前を探したぞ」 

「10分前に一緒にいましたけど」

「そうか!まぁ、良い。これ捨てといてくれ。」

と、庭で見つけたゴミを渡した。

「何ですか?これ。変身ベルトみたいじゃ無いですか!?…捨てるんですね?確認しましたからね?」 

と、言い彼は踵を返した。。

「外から見えないように、新聞か何かにくるんで捨てとけよ!近所のババァが、いちいちここから出るゴミ袋だけ、不燃物が入ってないか見やがるからな。」

「了解です」とだけ言うと屋敷の中へ入っていった。

以前もプラモデルとラジコンを燃えるゴミに隠し捨てた所、それだけ外に出され、何週間もそこにそれだけ置かれた。それも無視した所、家の前まで持ってこられた事がある。その時にババァには、

「何で俺の家のって思ったの?人んちのゴミ勝手に漁ってんじゃないよ??」

と注意はしたが、ここのゴミは特に暇なババァが気になって仕方ないらしい。


  翌朝、テレビを付けるとニュースを見ていると、気になる話題が飛び込んできた。

『昨日、戦隊ヒーローパープル氏が疾走した事が明らかになりました。残された手紙には、

「もうこんな生活嫌だ。ヒーローするなら金をくれ。同情するならかねをくれ。」と書かれていたそうです。その手紙の横には、謎のマイクが、置いてあったとの情報もはいっております。…

さて次のニュースです』

少し間を置き、主人はニヤリと笑った。

「おいマコト!昨日のベルトどこやった!?」 

「え?」

マコトとは昨日やり取りをした者である。マコト思った。

―はいキター。あなたはダチョウですか??一歩歩くと背中に人が乗ってることすら忘れるダチョウですか?捨てろって言いましたよね!?あ~参った参った。

と思いながら、口には出さず笑顔で答えた。  

「捨てましたけど。」

「拾ってこい!」

―おっとー。ただ今チャンネルスキャン中ですか

??それとも指名なしのキャバ嬢ですか?ころころころころ…ほんまどつわちやねん。

とは思ったが、やはり口には出さず、嫌だと言うことを、顔と態度に出したまま、ゴミ捨て場へむかった。

―もうゴミ無いよ〜パッカー車来てるよ〜捨てろ〜拾え〜どっちやねん。

ブツブツ言いながらゴミ捨て場に着くと思わず声が出た。

―YES、YES、YES‼

あら不思議、見えないように新聞紙でくるんでたはずの、変身ベルトみたいなゴミが、さらし首のようにゴミ捨て場に置いてある。

そのゴミを拾おうとしたときである。殺意のこもった視線。間違いなくこのゴミを袋からワザワザ出したババァだ。

マコトはそんなババアの怒りにこもった視線を無視しそれを抱えて屋敷に走って帰った。

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