第3話  海賊船②

海賊船・ビクトリー号のデッキで芦ノ湖の風を感じていた河上かわかみアキト。

遠くの女子グループの中から、木原きはらるなの声が聞こえた。


「風がきもちぃーね!見てみてお魚さんだ、釣りもしてる!」


木原月の鎖骨くらいまで伸びている髪がなびく。

風が吹くたびにインナーカラーのピンクミルクティー色がチラチラ顔を出し

左に2、右に1に付けいるピアスが、太陽から光を浴びて輝いていた。


髪の毛を整えてインナーカラーを隠すと、普段のブラウン色の髪型に戻った。


「ぉ、釣れたみたい!おじさーん!それ美味しい?!」


さすがに海賊船から手漕ぎボートまで木原月の声は届かなかったのか

釣りをしていたおじさんは微動だもしない。


「なんだし、無視かよ。ばーか」


すると、船に乗っていたおじさんがこちらを見た。


「やばっ」


海賊船のデッキでふざけあっている男子生徒の背中に隠れる木原月。

横から見ていた僕は釣りしていたおじさんが、男子生徒を睨んでるように見えたが

睨まれている男子生徒は、満面の笑みで他の男子とふざけあっていた。


「まぁ、見なかったことにしよっと」




「アキト、なんか言ったか?」

「いや…、それよりさっき青く光ってた水中鳥居の近くにあとで行かない?」

「光ってお前、それカメラのフラッシュだろ?」

千波せんばさー、フラッシュだったら俺でもわかるぞ」

「何も見えなかったけど、気になるなら行けば?俺はそれよりおみくじを引くに行くぜ」

「あぁ、自由時間の時にこっそり水中鳥居行くから、先生にはトイレに行ってるとか言い訳よろしくな」


アナウンスが入った


「まもなく桃源台港に到着します。お忘れ物ないようにお気を付けください」


僕は持っていたスマホのカメラ出すと船内を急いで写真におさめた。


――――――――






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