第四章 色模様

その日盗賊の一味に襲われた一同は、各々剣を抜いて戦っていた。

 ジェルヴェーズは剣を振るいながらもアリスウェイドが戦うのを横目で見ていた。

 あの男……彼かもしれないのだ。探している男が。

 戦いが終わって、彼女はアリスウェイドが倒した盗賊の死体を改めた。そして、その太刀傷を確かめた。

「やはり似ている……」

「なにをしている」

 後ろから声をかけられて、びくりとする。

「……なんでもない」

 立ち上がり、剣をしまう。

「もう芍薬の月になるな」

「ああ」

 アリスウェイドは空を見上げながらこたえた。

 早いもので、五番目の月である。

 この時、ルグネツァはいつものように魔導を使った。通常通り、詠唱はしなかった。

 それを物陰から見ていた何者かが一同を尾行し始めたことなど、誰も気がつかなかった。

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