第五話 プレゼント

 ミエは黙ったまま私をジッと見る。私は閉じていた口をゆっくりと開いた。


「ミエとの遊びをいきなりキャンセルしてっ」

「良いよ………もう。私にかまわなくて大丈夫だから。らーちゃんは………ううん水吉さんは他の人と仲良くして」

「違うよっ!そんなこと言わないでよ!」


 ミエの赤くなった目を見て、私は口を挟んだ。ミエにかまってる、とかじゃない。私はミエと関わりたくて関わっている。幼稚園の頃からそうして来た。


「だって水吉さんは、私より他の友達を優先したからっ」

「ううん、本当は」


 私はそう言ってカバンをあさる。ミエに嘘をついたことを謝らないといけない。ワガママかもしれないけど、真実ホントを伝えたい。

 取り出したのは、小さな飾りが付いたネックレス。


「これ、ミエの誕生日プレゼント。これを買いに行ける日がちょうど遊びを約束をした日でっ嘘ついて買いに行ったんだ」


 ミエは声を出さずに恐る恐る、プレゼントを受け取る。包装紙をペリペリとめくってネックレスを出した。銀色の丸がキラキラと輝く。

 それを見てミエは瞳を潤ませた。

 トクンと心臓が跳ねる。


「ぞ、ぞうだっだんだ………っ、らっ、らーじゃん」

「ミエ、嘘ついてごめん。今年はサプライズがやりたくてっ」

「らーじゃん、私ごぞっ、ごめん………っ!私よりも他の友達の用事を優先してっ、ヒック、悲しくなっちゃって。何か…………………変に考えちゃってごめん」

「ううん、こっちの方こそ」

「いやいや私も」


 私が頭を下げると、ミエも同じように謝る。本当に私が悪いんだけどなぁ。


「「………アハハッ!」」


 私達は目を見合わせて、お腹を抱えた。どっちも謝りすぎて、おかしいっ!いつもならすぐに仲直り、なのに。


「もぅ――らーちゃん謝りすぎだよっ」

「ミエがそれ言う!?………まぁ、いつもに戻れて良かったよ」

「う――ん、そうだね。改めてプレゼントありがとう」


 ミエがいつもより頬をバラ色に染めて微笑む。そして、ミエはネックレスをつけた。

 うん………私があげたけど似合ってる!銀色にきらめく丸がキレイ。


「これっダイヤ?」

「う――ん、そう思っておいても良いよ?」


 私がそう言うと、ミエはクスッと笑った。そんなに高価なものは買えないけど、それぐらいの思いを込めて買ったよ。

 喜んでくれて、頑張って選んだかいがあったな、と思う。


「私達の絆はこんなことで切れないよね」


 うん、ミエの言う通り。

 幼稚園からのミエとの仲はダイヤよりも硬くて切れない。

 私達の紡いだ絆はダイヤよりも硬くてキレイなんだから。

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私達が紡いだ絆はダイヤよりも硬くてキレイ。 石川 円花 @ishikawamadoka-ishikawaasuka

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