第四話 ミエとの『日常』

 ああ…どうしよう、どうしようっ!もうすぐ今日が終わりそうな夕方、ミエの誕生日当日!どうしよう、ああ―――……。

 ミエは私を避けて生活している。どうやってプレゼントを渡す?

 ポストに入れる訳にはいかない。直接会って渡したい。でも………っ、ミエは…会ってもくれない。私が悪いことは分かってる。分かってるけど…はぁっ。

 いつもミエと通っていた通学路。一緒に帰っていたことが、普通では無く特別だったんだなぁ…そう思うとますます悲しくなった。

 私はチラリと鞄を見る。この中にプレゼントが入っている。もう、それも渡せないの…?悲しさで心が埋め尽くされる。

 こんなに辛い誕生日は初めてだよ……。


「ギャアッ」

――バシャ――ッ


 横断歩道を渡ろうとすると、悲鳴が聞こえた。その現場を見てみると、一人の女の子に数人の男の子が水をかけている。近くの川の水をバケツに入れている人が数人…ナニコレ?

 待って……これはダメな状態じゃない!?イジメ!?

 

「や、やめっ」

――バシャッ

「ちょっと!何してるの!」


 私は、自然と口を開けて叫ぶ。すると、女の子が涙目で振り向いた。

 ……嘘っ、ミエ!?あの女の子はミエだったの!?なら、ミエはイジメられてるの!?私は走って、ミエの前に立ちふさがった。


「水かけて遊ぶとか、小学一年生レベルだよっ!やめなっ!」

「ゲッ。水吉来たよ」


 私が来たことを確認すると、男の子達が顔をしかめる。そんなに私、恐れられることしたかなぁ?ちょっと悲しい……。

 でも、そんなことを気にしている場合じゃないっ!


「ミエにやるんだったら私にやって!」

――バシャ――――――ッ

「ゲホッ、ゴホッゴホッ」


 私が喋り終えると、上から滝のように水が降って来た。口が少し開いていたから、水を飲んで咳き込んでしまう。

 目も水のせいでヒリヒリ痛む。


「ちょっと何すんのよ!」

「うっ、そろそろ怒りがひどくなるっ!」


 私が一歩前へ出ると、男の子は一気に逃げ出した。安心し、私は頬に垂れた水をぬぐう。

 でも、安心じゃなかった。


「あ…………ミエ…」


 振り返ると、ミエが私のことを悲し気に見つめている。

 やっとミエと喋れるかもしれない…そんなチャンスだけど私は弱気になった。ミエは何か喋ったくれるのかな…。


「ミエ…ごめんなさい……」

「………」

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