第6章 帰郷
願い
凜霞はベッドに寝ころんだまま、困惑の表情で天を仰いでいる。
凜霞は早朝に、まだ誰もいない空間で冷え切った空気を浴びることが気に入っていて、病院では高齢の方よりも早く起きるのが日課だった。
今日も早起きをして、本当は太郎丸へと挨拶に行きたかったのだが……体を動かすことが、できないでいた。
すぅ……すぅ
耳元では、穏やかに繰り返される呼吸音。
胸に絡みついている、細い腕。
そしておなかの上には片足が、しがみつくように乗せられている。
片腕全体にかかる、重みと温かみと柔らかさ。
起きてみたら、みづきがぴったりと身を寄せて眠りについていた。
凜霞は迷う。
早朝の冷えた空気を浴びに行くか、みづきの寝息と温もりを受け続けるか、どちらを選ぶべきか。
灰色の天井を見つめる。
鳥のさえずりと時計の秒針と、みづきの呼吸音だけが聞こえる静寂な空間。
今が何時何分何秒なのか、時計が視界にないから見当もつかない。
けれど、もし動いてしまったらみづきが起きてしまうかもしれない。
そう思うと身動きができず、そのまま呼吸さえ控えめにして、ただ天井を見続けていた。
みづき先輩、よく眠れていますか。
これからも、私のことを憶えていてくれますか。
もし、私の夢を見てもらえるのなら、
その夢の中で、貴方とお話ができるといいな。
そう思いながら。
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