目覚めないみづき

 ちゃいろ、しろ、みずいろ、ももいろ。

 ゆらゆらと混ざり合って、ぐるぐると渦巻いている。


 ゆらり、ゆらりと。

 右に、左に傾いて。



 そこへ、

 さっと絵筆を引いたかのような、白。

 一直線にすべてを切り裂く。


 色たちは驚いて、混ざり合ったまま逃げていく。


 みんな、どうしたの。

 どこへ行っちゃうの?



 そして突然、真っ暗な影が降りてくる。

 ふわりと降りてきて、すべてを覆い尽くして。

 色と光を失った世界に、蒼く輝く宝石が二つ、きらりと輝いた。



「……せんぱい」

「ぁ」

「朝ご飯の時間ですよ、起きて下さい」

「ごは……ん」

「亜紀さんが、そろそろ来ますよ」

「あ、き、さん……あき、さん? 亜紀さん。お、おぉぉ怒られます、マズいです!」


 だがすでに時遅し。


 ゲストルームの入り口は半開きになっていて、その先には亜紀が長めのポニーテールを垂らして立っていて、もの言いたげな表情でこちらを覗き見ていた。


「お、は、よ、う、みづきちゃん。……鍵開いてたぜ。凜霞、閉めなかっただろ」

「そうでした。申し訳ありません」

「もしかして鍵締めの習慣がないんか」

「病院では鍵を閉めることはなかったので」

「そりゃしゃーないか。だけど、気をつけろよ」

「はい。以後気をつけます」

「あああああ亜紀さん。おはようございます」

「おう、みづき。で、誰が、何だって?」

「いえ、たった今、バッッッチリ、とてつもなく、しっかりと、目が覚めました!」

「じゃあとっとと着替えて、顔洗ってこい」

「はい。今すぐにそういたしますです」

「待って、カーテンを閉めないと。みづき先輩、まだ着替えるのは待ってください!」

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