夢の中で
ここは、真っ暗な空間。
その中央には黒髪の少女が病衣を着て立ち尽くしている。
少女の閉じられた目が、薄く開く。
蒼みのある瞳が右に、左に彷徨う……が、見渡す限りは深淵のような暗黒の空間。
腕を上げ、細い指を顔へと向ける。長い黒髪が、はらり、と宙に舞う。
少女は小さな声を漏らしながら眠そうに目をこする。――すると、
「ここは……?」
再び目を開けると、そこは白い空間になっていた。
遠くからはピッ……ピッと一定のリズムの機械音。
簡素なパイプベッドと小さな棚が置かれていて、薄いカーテンで囲まれただけの狭い空間。
上を向けば煤けた白い天井に直管の蛍光灯が、ちらつく光を放っている。
そこは自分にとっては見飽きすぎて、もう何も感じられない場所――病室、に違いなかった。
少女はカーテンを丁寧に閉めなおして、病衣から黒いワンピースへと着替え、ポーチを手に取り、棚の引き出しの中から財布とハンカチと手の平サイズのクマのぬいぐるみを入れて、何気ない表情で病室を出る。
遠くから、お買い物? と誰かの声。売店に行ってきます、とうわの空で答え、そして――
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