第11話
「ノイマン様、お待ちしておりましたわ」
ノイマン様は黒の軍服を着ており、いつになく真剣な表情をしている。
「ノイマン様、どうなさったの?」
心配になり声をかけた。
「ローザアネット、私は明日、国に帰らねばならない」
「・・・そうなのですね」
私はとたんに寂しさに襲われる。もうノイマン様に会えなくなると思うとどうしようもなく悲しくなってくる自分がいる事に気づいた。
「実はね、私がここに来た理由。それは君を迎えにきたんだ。ちょっと時間がかかってしまったけれど」
「私を、迎えに・・・?」
「あぁ、ずっと君が好きだった。だが、あいつの婚約者だったし、結婚しただろう?諦めていたのだが、離縁すると聞いて諦めきれずにここにやってきた」
「でも、国は私を渡さないと思いますわ」
「それについては大丈夫さ。根回しをしてきたからこんなにも時間がかかってしまったのだけどね。あとは君の気持ち次第だ」
「わ、私の気持ち次第、ですか?」
ノイマンは真剣な顔で私の前に跪き手を差し出した。
「ローザアネット嬢、一目見た時から貴女に惹かれて止みません。10年経った今も変わらず貴女の事を思い続けている重い男ですが、生涯貴方1人を守り、慈しみます。どうか私の手をお取りください」
・・・どうしようもなく嬉しいと思う自分がいる。
けれど、この国に不利益をもたらすのではないかと思うと不安で足が竦んでしまう。
「嬉しい。貴方が国へ帰ると聞いてとても辛く感じたわ。今までの人生で一番嬉しい。貴方の側に居たいと思う。でも、私はここから出る事は叶わないもの」
私は、差し出された手を取りたいけれど、領地に残された家族や領民を思うと、震えた手はどうする事も出来なかった。するとノイマン様は立ち上がり、差し出していた手で私の震える手をそっと握る。
そしてそのままグッと私を引き寄せて抱きしめた。
「では、私がこのまま貴女をここから攫ってしまうとしよう」
そう彼は告げると私に深い口付けをする。
「あっ」
漏れ出た声に自分でもどうしていいか分からないが、羞恥心がこみ上げて顔が真っ赤になるのはわかった。
「美しい。このまま食べてしまいたいが、我慢しておこう」
彼はそう言うと、私をそのまま抱え離宮の外門へと向かうように歩いていく。すると門の前には1台の馬車と侍女のターナが何かを話していた。
「ローザアネット様!」
ターナが私に気づき走り寄ってきた。
「・・・ターナ」
ターナは涙を流しながら話す。
「お嬢様、良かった!!ずっと心配しておりました。私共は荷物を纏めた後にすぐに向かいます。しばしの間離れるのは辛いですが、少しの間だけ我慢してください」
ターナはこうなる事を知っていたのね。
「ターナ、後は頼んだ。馬車の手配は済んでいるのでこの後、荷物が積めるだろう。こちらはゆっくり進むだろうからすぐに追いつくはずだ。では行こうか、我が姫」
私はそのまま馬車へと乗せられた。
突然の出来事に不安と喜びと様々な感情が湧き起こり、そっと窓の外を眺めながら馬車は隣国へと旅立った。
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