第3話 アルバム
「ふぃー……」
俺はスズの部屋で、ベッドに倒れ込む。ティータイムで、全ての体力を使い果たしてしまったのだ。
スズの枕に顔を埋める。俺の匂いと混ざる前のスズの匂いがする。
付き合ってから同棲する前の、甘酸っぱい期間を少し思い出して、俺は懐かしい気分になった。
「……少し恥ずかしいのだけれど」
「……うん」
「仕方ないわね」
スズは体力を使い果たした俺の代わりに、荷物整理を始めている。
今回の帰省の目的として、スズの服の入れ替えというのもある。荷物整理と並行して、それもやっているようだ。
一通り終わらせた後、スズはのっしとうつ伏せで寝る俺の上に腰をおろしてくる。
胸は大きいのに、案外軽い。
すずはよしよしと俺の頭を撫でてくる。
「お義兄ちゃん!遊びましょ!」
と、キリちゃんが部屋のドアを開いてやってきた。
そして、うつ伏せに寝る俺と、その上に腰を下ろして俺の頭を撫でるスズを見る。
「……特殊なプレイですか?」
「違うわよ!」
スズは吠えると、俺の上から飛び退く。俺は起き上がり、ベッドの上に座る。
「キリちゃん。何して遊ぶんだ?」
「ふふふ。お姉ちゃんのアルバム、興味ないですか?」
ある。結構ある。
「なんなら卒業アルバムもありますよ」
「ほう?」
俺は立ち上がる。
卒業アルバム。なんと魅力的なワードだろうか。
「ぜひ見たいな」
「待ちなさい。どうして卒業アルバムをあなたが持っているのかしら?」
「そりゃ、お姉ちゃんがゴミに出そうとしているのを妹たるこの私が回収したからね」
【悲報】俺の彼女、卒業アルバムをゴミに出していた。
いくら思い出が何もないからって……
俺が呆れたような視線を抜けると、スズはバツが悪そうに視線を逸らした。
「あ、お姉ちゃんはママが呼んでたよ」
「……そう」
スズは立ち上がると、俺の耳に顔を寄せると、こう囁く。
「浮気したら、殺すから」
「ああ、うん……」
スズの目は、本気だった。
「心配しなくても、盗らないよ。恋人にしたら、お義兄ちゃんじゃなくなっちゃうでしょ?」
「……そ。ならいいけどね」
スズはそう言って立ち上がり、部屋を出ていく。
「さ、私の部屋に来てください!」
キリちゃんはそう言うと立ち上がり、俺の手を握ると、引っ張るようにして自分の部屋へと俺を導いた。
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