エピローグ
「俺は、スズが好きだ」
「うん」
「俺が好きだ」と宣言した陽毬に、俺はそう答えた。
「スズと付きあっているし、結婚も考えてる」
「うん」
すでに俺たちは互いに両親に挨拶を済ませ、また両親同士も会っている。
外堀はもう、完膚なきまでに埋まっている状態で、将来の結婚が現実的に考えられる段階まで来ている。
「だから、陽毬の気持ちに応えることはできない」
俺がそう言うと、陽毬は何故か嬉しそうに微笑んだ。
「ふふ。一途なんだね」
「…………」
俺は沈黙する。
「うん。美玲ちゃんと積み重ねた愛情も、思い出もたくさんあると思う」
いつのまにか「美玲ちゃん」呼びになっている。随分と仲良くなったものだ。
「それでも……明樹くんには、最終的には私を選んで欲しいんだ」
「……我儘だな」
「うん。だって、好きだから」
そう言うと、陽毬はまっすぐ俺の目を見る。
「高校に入って、いつの間にか疎遠になっちゃって……大学入ってから、ずっと後悔してた」
「……うん」
「だから、また同じ間違いは犯さない」
陽毬は案外、強情だ。
欲しいものは少ないが……いや、少ないからこそ、欲しいものは必ず手に入れようとする。
「覚悟しておいてね。必ず……振り向かせてみせるから」
「お手柔らかに頼む」
俺はしかし、そんな陽毬を完全に拒絶することはできなかった。
スズの気持ちを考えれば、一切の関係を断つべきなのだろう。
しかし、このボードゲーム研究会は、俺だけでなくスズにとっても居心地がいい場所だ。
それに、いまさら陽毬にアプローチされた程度で俺のスズへの愛情は揺らがない。
「ふふ。それじゃ、もう一回やろっか」
陽毬はそう言って盤面のコマを全て片付ける。そして、コマを渡してきた。
「ああ。もう一回だ」
俺はそのコマを受け取り、盤面へと配置した。
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