エピローグ
「まったく、あの子たちは……」
帰り道。
スズはほっぺたを膨らませつつも、少し楽しそうだった。
持ち前の美貌と、そしてかなり人見知りな性格が災いして、スズは小中高と周囲から孤立していたらしい。
友達もいなく、二人組を作るのにも苦労していた……とは、スズのお母さんの弁である。
しかし今は、信頼できる仲間もいて、後はまあ、同棲している愛する恋人もいる(自分でこう形容するのは恥ずかしいが)。
最早スズが孤立を感じる暇がないほどに、人と繋がっている。
「ねえ、アキ」
「うん?」
「私、今とっても幸せよ。こんな日常が待っているなんて、高校生までは想像もしてなかった」
「うん」
スズはぎゅっと俺の手を握る。
「あの時……アキと出会えてなかったら、多分今も孤独な人生を送ってたと思う。だから、アキには感謝してる」
「……俺も、スズと出会えて良かったと思ってるよ」
「うん。知ってる」
スズはそう言うと、少し悪戯っぽく笑った。
「そういえば、なんか絡まれてなかった?」
「え?」
この文脈でその話題を出すのは本当に怖い。
「実は倉内から絡まれて……」とか言ったら、なんかとんでもないことが起こりそうだ。
「い、いや、特には。気のせいじゃないか?」
俺はなんか怖かったので、とりあえず誤魔化しておいた。
まあ、倉内の絡みは正直犬がじゃれてきてる程度のものだし、十分対処可能だ。
いざとなれば、プロジェクトリーダーや、他セクションのリーダーなど、頼りになる先輩がいる。
「そう。ならいいけど」
スズの顔には、「アキを害するものは許さない」と書いてある。やっぱり、ちょっと怖い。
「なんかあったら言いなさい」
「ああ、うん。もちろん」
ほとんど最終手段なような気がする……とは、口に出さなかった。
と、そんな話をしている間に、俺たちは家に着いた。スズが鍵を開け、「ただいま」と言いながら家に入っていく。
俺はそれに続いて、家に入る。
「……スズ」
スズと一緒に家に入るこの瞬間がなんだかとても大切なような気がして、俺は思わずスズの名を呼ぶ。
「何かしら?」
スズは振り返る。
「ずっと一緒にいよう」
思わずそんな言葉が出る。スズは少し驚いたように目を見開くと、愛の言葉を返してくれる。
「ええ。ずっと一緒にいましょう」
スズは優しくキスをしてくれた。
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