第5話 明日も休日でしょ?

ヒロ・飯島カップルと別れ、軽く服屋と食料品フロアを巡ったあと、俺たちは帰路についた。


家に到着し、買ってきた食料品を冷蔵庫に放り込んだのち、俺たちは揃ってベッドの上に座る。


「ん……」


スズは甘えるように、体を密着させて体重をかけてくる。俺はスズの腰に手を回し、丁寧に抱き寄せる。


そして、惹かれあい、唇を重ね合う。

スズの腰に手を回し、距離を縮め、ゆったりとしたキスを楽しむ。


やがて俺たちは唇を離し、互いの顔を見つめる。愛の情熱に目は潤み、顔は上気している。

もはや耐えられないとばかりに、スズは俺をベッドの中に引き込んでくる。


そして俺たちは、束の間の情事にふけった。


行為が終わり、俺はベッドの中で裸のスズを背後から抱きしめていた。

乱れるからと途中で髪をポニーテールにまとめたおかげで、綺麗な首筋が露出している。

たまらなくエッチだった。


「……肩」

「……ん?」

「ごめんね」


俺の左肩には、綺麗な歯形が勲章のようについている。それも二つ。

もちろん、犯人は我が恋人である。


「いーよ」


俺はよしよしと頭を撫でる。


「……ん」


スズは心地良さそうな声を上げる。


「……なんか、あの二人」

「うん?」

「懐かしい気分になった」


あの二人、と言うのは飯島・ヒロのカップルのことだろう。


「同棲を始める時の、ドキドキした気持ちとか。ワクワクとか」

「ああ」


同棲生活もそろそろ八ヶ月。最早互いの日常に互いが存在することが当たり前になった。

俺はスズなしではもう生きられないし、スズも同様だと思う。


「二人で家具選びにいったっけな」

「そうね。おっきなIKEAに言って、一日かけて揃えた記憶があるわ」


居間にあるちゃぶ台は、IKEAで買ってきたものだ。

そのほかにも、粘着カーペットクリーナー––––いわゆるコロコロ––––だったり、クローゼット収納ボックスだったり、家にある細々したものは、IKEAで買ってきた記憶がある。


と、ピコンという通知音が響く。

この音は……俺のスマホだ。


手を伸ばしてスマホを取り、メッセージアプリを開く。


「あー、スズのお母さんからだな」

「……なんて?」

「来週の連休に、顔を見せに来てほしいってさ」


スズではなく俺に連絡してきたことには、あえて突っ込むまい。


「……そうね。せっかくだし、帰ることにするわ」

「俺も予定はないし、作業だったら外出先でもできるから、行けるぞ」

「そう。なら、二人で行きましょうか」


スズはそういうと、休憩は終わりとばかりに俺に馬乗りになる。豊かな胸がたゆんと上下して俺の視線を惹きつける。


「あの……」

「大丈夫。明日も休日でしょ?」


そう言うと、スズは俺の唇を塞いだ。

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