第5話 みらい⭐︎きらり⭐︎かがく
翌日。俺は日曜日にも関わらず、大学に来ていた。今日は、俺とスズが所属しているプロジェクトの会合があるのだ。
俺は教室に入り、いつものように隅っこに陣取ってノートパソコンを開き、傍に置いてあるディスプレイを二枚繋げる。
スズはというと、同じセクションのメンバーと合流している。
「おはよう、久留米くん。調子はどうだい?」
「
作業を始めようとすると、プロジェクトリーダーの神子戸先輩が話しかけてくる。
「五つの小プロジェクトのうち、3つは実機でデバグをする段階まで来てます。残りは、叩き台まで完成してる感じですね」
「ふむ。上々だね。さすがだ。複数の案件をここまで処理できるプログラマーはなかなかいないんじゃないかな」
「そうですかね」
神子戸先輩率いるこのプロジェクトの名前は、「みらい⭐︎きらり⭐︎かがく」だ。
「都市」「交通」「物流」「仮想」「災害」の五つのセクションがそれぞれ1人ずつ小プロジェクトを完成させ、全体として大きなテーマを実現する。
学内でも最大規模の、歴史あるプロジェクトである。
ダサいというか、女子小学生みたいなネーミングセンスだが、そんなことは口にしてはいけない。
特徴としては、メンバーが全員女性であるか、または女性メンバーの恋人であることだ。
近年では女性の理系分野への進出が取り沙汰されていることもあり、この「みらい⭐︎きらり⭐︎かがく」プロジェクトもメディアで取り上げられたりしているらしい。
俺はその辺りには関わっていないので、よく知らないが。
ちなみに今年のテーマは「虫」だ。
「謙遜は時に毒だぞ、久留米くん」
「肝に命じておきます」
「よろしい」
そんなお決まりの会話を交わす。
「では、頑張ってくれたまえ。仮想グループから早速、相談があるようだぞ」
神子戸先輩がそういうと同時に、「仮想」グループのメンバーが俺の机を囲んだ。
「ねーねー久留米くん、このコードどうやって書くのさ?」
「それはGitHubにコードがあるから、それを改変してくれれば」
「このコード動かないんだけど」
「そこは論理がループしてる」
「仮想」セクションのプロジェクトの成果物は、仮想空間上に構築するため、大量のプログラミングが必要となる。
しかし、メンバーにはプログラミングを多少齧ったことがある程度の人しかいないため、必然的にコンピュータサイエンス学部の俺が結構な頻度でアドバイスをすることになっているのだ。
一段落すると、今度は他のセクションから相談者がやってくる。
俺はしばらくの間、作業をやめて相談に応じるのであった。
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