第4話 同棲生活

「今日二人は、どういうデートをしていたんだ?」


俺はふと気になってヒロと飯島に聞く。


「家具を見にきたんですよ」

「家具?」

「はい!私たち、今度同棲を始めるつもりなんですよ!」

「へえ……」


ヒロを見ると、少し気恥ずかしそうにちゅるちゅるとうどんを啜っていた。


「お二人は同棲中なんですよね?そうですか?実際、同棲を始めてみて」

「そうだな……スズ、どうだ?」


急に振られたスズは一瞬、「どうしてこっちに振るのよ」と言いたげな表情になると、飯島に答える。


「そうね……最初は喧嘩ばかりだけれど、だんだんそれが収まって……そうね。恋人というより、“パートナー”になるような気がするわ」

「へえ……」


飯島がちょっと顔を赤くしている。

自分たちの未来を想像したのかもしれない。


「アキはどうなのよ?私と同棲を初めてみて」


スズがそう言って投げられたボールを返してくる。


「まあ、いいもんだぞ。周りの目を気にせずにくっつける……甘えられるし、甘やかせるし。知らない一面も見れるし」

「へえ……いつもクールぶってますけど、久留米くんも家では甘えん坊なんですか?」


クールぶって……


俺は飯島のあまりのいいように絶句したが、思い当たる節があったので悲しいことに何も言い返せなかった。


「そ……そうね。よく膝枕をせがんできたり、くっついてきたり……ハグをねだってきたり」

「いや全部、スズもやってるだろ」

「…………」


スズは無言で顔を赤くする。


「へえ……二人きりの時はそんな感じなんですね」


飯島がニヤニヤとした笑みを浮かべながら俺たち二人を見る。

なんだか、俺たちが一方的にダメージを負った気がする。


「ところでお二人は、同棲を始める時、家具とかはどうしたんですか?」

「大体、二人の家から持ってきたわね。買ったのは、ダブルベッドとちゃぶ台くらいかしら」

「なるほど……参考になります!」


飯島はそういうと、スマホにメモる。


「それにしても、ヒロが同棲か。実際、いつするんだろうとは思っていたけど」

「そうか?」


まあそりゃ、あれだけラブラブっぷりを見せつけられれば。


「そういう二人は、今日はどういうデートなんだ?」

「ああ、映画を見にきたんだよ。そんで、この後は少しショッピングをしてから帰るって感じだな」

「ベタだな」

「うるせ」


結局、デートは奇を衒うよりオーソドックスな安牌が一番だ。

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