第3話 文化祭
「その服。とっても可愛いですね!どこで買ったんですか?」
「あ、この服は……」
お蕎麦屋さんについて、注文するや否や、女性陣はガールズトークを始めてしまった。
スズと飯島は初対面だが、飯島がうまく会話をリードしてくれているようだ。
一方取り残された俺たちは、互いに話題を探す。
「あー、文化祭の準備は進んでいるか?」
俺は無理やり話題を捻り出す。
「ああ。一応、去年のプロジェクトに入れてもらえることになった」
他の学校ではどうか知らないが、うちの学校では「文化祭」はとても重要な意味を持つ。
「文化祭」では、生徒たちが様々なプロジェクトを立ち上げ、その成果物が様々な形で展示される。
それを見に来るのは、保護者……というより、企業だ。大手からベンチャーまで、国内企業から海外企業撫で、実に多種多様な企業が文化祭にやってくる。
目的は、技術、そして優秀なエンジニアの獲得だ。
そう、文化祭は俺たち学生にとって就職活動の場なのだ。
実際に去年何人もの先輩が文化祭で就職を決めるのを目の当たりにしたし、銀行から融資をもらって起業に成功した例も知っている。
「去年のプロジェクト……確か、ロボット工学だっけ?」
「ああ。去年の経験から、声をかけてもらったんだよ。美奈も一緒だからな」
ちなみに、慢性的なプログラマーの不足により、コンピューターサイエンス学部の学生は引く手数多だ。
中には、複数のプロジェクトを掛け持ちする狂人もいる。
文化祭の直前期には平気で三徹とかする羽目になるので、全くお勧めしないが。
「今年は、いわゆる“やわらかいロボット”の開発をする予定でな。その動きを出すのに苦労してんだよな。モデリングとその動きのコードが……」
以下、オタクな会話が続くのでカットする。
「……それで、お前は今年はどうするんだ?」
「今年はスズがいるところのプロジェクトに参加することになってる」
「あれ?あそこって確か、男子禁制じゃなかったか?」
「メンバーの彼氏ならいいらしいぞ。まあ相当揉めたらしいが……」
ほとんどのメンバーが学外に彼氏がいるか、あるいは彼氏がいないかなので、男子は俺一人だけなのだが。
「なるほどな……っと。来たな」
そこでちょうど注文した食事が運ばれてきた。
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