第2話 ダブルデート?
あっという間に映画が終わった。
映画を見終わったあと特有の気怠さのまま、俺たちは映画館を出た。
「なかなか面白かったわね」
「確かに、面白かったな」
「……何か含みがあるわね」
さすが、勘が鋭い。
映画はかなり面白かった。映像も綺麗で、アクションシーンはかなり凝られていた。
しかしその反面、回収されてない伏線がいくつかある。
続編を出したい、いわゆる“考察勢”を動員してバズらせたい、という制作者側の都合が透けて見えた。
もちろん映画を楽しんだスズには、俺は「そんなことないぞ」と惚けた。
「そうかしら?あなたのことだし、制作側の都合が透けて見えるとかなんとか言うと思ったけど」
なんでバレたし。
「いや、そんなことはないぞ。少しVFXを齧ってる人間として、あの視覚効果の出し方はとても気になった」
「そ。ならいいけど」
俺の言い訳に、スズはそう微笑む。全てお見通しのようであった。
「お昼、食べましょうか」
「ああ。どこがいい?」
「そうね。夜はガッツリちゃんぽんを食べる予定だし……昼間は軽めに、お蕎麦とかどうかしら?」
「いいね」
俺たちはショッピングモールの上の階にあるレストランフロアへ向かう。
お昼前ということもあり、ショッピングモールにかなりの人が集まってきている。
「おう、久留米」
と、背後から俺を呼ぶ声。振り返ると、ヒロと、その恋人の飯島がいた。
飯島は筋骨隆々なヒロの腕に抱きつくようにして歩いている。
どうやら、ヒロ達もデート中なようだ。
「彼女さんも、こんにちは」
「ああ、うん。久しぶりね」
一応、スズとヒロは面識がある。
しかし、前に会ったのはヒロが髪を金色に染めていなく、またジムにも通ってすらいない頃だった。
黒髪の隠キャ然としたスタイルからの変化に、スズは戸惑っているようだ。
「……話には聞いてたけど、すごい変化ね」
スズが恐ろしい物を見るような目で飯島を見る。
「そんなに変わったか?」
と、ヒロがそんな返答をする。
本気で言っているのか、それとも惚けているだけなのか、俺には分からなかった。
「それで、久留米」
「なんだ?」
「昼飯、一緒に食わないか?」
と、ヒロがそんな誘いをしてくる。
「あー、俺は構わないが」
「私も構わないわ」
俺とスズが賛意を示すと、ヒロが嬉しそうに頷く。
「そうか!」
「一応、俺たちは蕎麦を食べようと思ってたけど」
「上の階のか?」
俺は頷く。
「ああ。どうだ?」
「いいぞ!」
「じゃ、行くか」
早く行かないと、席が埋まってしまう。
俺たちは話もそこそこに、蕎麦屋さんへと向かうのであった。
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