第12話 運命の悪戯
場に緊張が走るのを感じる。
俺は説明書を今一度確認する。
「えーっと、どうやら説明書によると……1から4が出たらアイリーンと、5から8が出たらスズと、9-12が出たら陽毬と結婚するらしいな」
「……へえ」
「ふふふ」
アイリーンは怪しげに笑うと、意地悪い質問をしてくる。
「……明樹さんは、誰と結婚したいんですか?」
それに対して、俺は先程までの意趣返しの意味もこめて即答する。
「そりゃ、アイリーンだろ」
「……へ!?」
「……は?」
「…………」
アイリーンは自分が選ばれるとは思っていなかったのか、素っ頓狂な声を上げて赤面する。
それに対し、スズは俺の言葉を聞き捨てならないとばかりに目をガン開きにしてこちらを見ている。怖い……
陽毬はというと、こちらを半睨みだ。この浮気者……という感じだ。
「だって、アイリーンが一番金持ってて、職業もいいだろ?」
アイリーンはかなりの豪運で、これまでお金を貰えるましにしか止まっていない。もちろん、職業も一番給料が高いものだ。
「……そ、そうですか」
アイリーンは顔が暑いとでもいいようにパタパタと手で顔を仰ぐ。
勝った……
俺は勝利の余韻に浸る。
「ふーん……」
スズは不満そうだ。
まあ、恋人の立場からして見れば、たとえゲームであっても自分を選んで欲しいだろう。
それは分かるのだが、とはいえゲームには勝ちたいのが男心である。ここは勘弁してほしい。
俺は代わりにちゃぶ台の下でこっそりぎゅっと手を握って機嫌を取る。
するとかなり強めにぎゅっと握り返された。若干痛い。
陽毬はというと、ジト目になると、ぷいっと横を向いてむくれる。
「それじゃ、回すぞ」
俺はルーレットを回す。
三人が注目する中、出た目は……またしても「1」だった。
2人分のため息が部室に木霊する。
対して、結婚相手に選ばれたアイリーンは再度顔を耳まで真っ赤に染め上げる。
それを見て、スズが爪を立ててきた。
結構痛い。多分後で見たら跡がついてそうだ。
俺はアイリーンのピンを車から下ろし、自分の車に乗せる。
ちなみに、プレイヤーと結婚した場合、財産は統合され、さらに毎回のルーレットも二人が回した値の平均値になる。
「さ、ゲームを続けるか」
「ソ、ソウデスネ」
「…………」
「…………」
何故か片言になるアイリーン。
対するスズと陽毬は無言だった。
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