第10話 人生ゲーム
一時間後。
ガチャッと扉が開き、部室へとアイリーンが入ってきた。
「ごめんなさい、遅れました」
「アイリーン。お邪魔してます」
「いえいえ。もうサークルの一員なのですから、ここはあなたの部室でもありますので!」
そういうと、アイリーンは座布団を敷いて、机の一角に腰を下ろす。
「クアルトですか!戦績はどんなもので?」
「俺が一勝、陽毬が六勝ってところだな」
「流石に経験の差がありますからね!そう簡単には勝てるようになりませんよ!」
「まあね」
陽毬は頷くと、コマを渡してくる。
しかし、それは致命的な悪手だ。
「あっ、それは……」
アイリーンが指摘するよりも先に、俺は駒を盤面に配置し、高らかに宣言する。
「クアルト!」
「あっ……」
陽毬がしまったという顔つきになる。
俺は反対に、してやったりという表情だ。
「うーー」
陽毬が頭を抱えて唸り声をあげる。
と、かちゃりと再びドアがゆっくりと開く。
「えっと……」
おずおずと入ってくるスズに、俺は声をかける。
「スズ、こっちだ、靴を脱いで上がってくれ」
「アキ」
スズは靴をぬぎ、こちらへいそいそと移動してくる。俺はその間に座布団を棚から取り出して用意しておく。
スズはそれに座ると、アイリーンがパン、と手を叩いた。
「それじゃあ、出会いを記念して……早速、ゲームを始めましょう!」
「……何をするんだ?」
「これです!」
アイリーンはそういうと、少し大きめのパッケージをゴソゴソと取り出してくる。
「人生ゲームの、五代目です!」
「ええ!?」
驚いた声を上げる陽毬。
俺とスズはその反応に首をかしげた。
「えーっとね……」
「まあまあ、とりあえずやってみましょう!」
説明しようとした陽毬をアイリーンが遮り、それぞれにプラスチックでできた車を模したコマと、それからピンを配っていく。
車が普通のサイコロで言うコマにあたり、ピンはそれに乗せる“人”である。
「順番は……」
「私から右回り、でいいですか?」
「ああ」
つまり、アイリーン、俺、スズ、陽毬の順番だ。
「それじゃあ、ゲーム開始ぃ!」
ゴングの代わりとでもいうように、アイリーンが勢いよくルーレットを回す。
カリカリカリカリ……という心地いい音が部室に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます